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第一章 浅草十二階バラバラ殺人事件
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やっとの思いで六階に着いた。階段の角度が急で、山登りでもしたかのように疲労した。鈴木巡査も脇腹に手を当てて苦しんでいる。
僕は半円梁をくぐり、その階を見渡した。どうやら衣料品売り場のようだ。和服を中心に、新品も古着も売られている。それらより布売り場の方が面積を占めている。大きな物からハギレまで何でもある。柄も無地から小花柄まで色々だ。色の多い風景だなと思った。
この階も一階同様、ニス臭かった。おそらく全ての階がそうなのだろう。
「この階の従業員部屋には誰がいるのです?」
「清掃員の中嶋兵次郎です」
と、鈴木巡査。その名は小波津さんの聴取の時にも聞いた。
「どんな人ですか?」
鈴木巡査は面倒臭そうに教えてくれた。
「歳は二六。四ヶ月前からここの清掃員をしています。お聞きの通り、この六階の商品棚に血文字で彼の名前が書かれていたので連れて来ました。本人は何の事か分からない、と。沖塩氏の事も知らないと言っています。ちなみに昨日は九時まで働いたそうで」
「血文字が書かれた商品棚はどこですか?」
鈴木巡査は階の中心にある昇降機の近くを指差した。
そこには、下段は引き出しになっている大きな棚があった。色は焦茶。昇降機から降りた客の目にすぐ停まるように置いてある。上半分は色取り取りの着物や甚平が畳まれて置いてあった。
側に行ってみると棚の後ろに、小さくカタカナで「ナカジマ」と書いてあった。血の色が黒っぽいせいと、字がまるで木の模様のように見えて、一瞬見ただけでは気付かないものだった。
僕は半円梁をくぐり、その階を見渡した。どうやら衣料品売り場のようだ。和服を中心に、新品も古着も売られている。それらより布売り場の方が面積を占めている。大きな物からハギレまで何でもある。柄も無地から小花柄まで色々だ。色の多い風景だなと思った。
この階も一階同様、ニス臭かった。おそらく全ての階がそうなのだろう。
「この階の従業員部屋には誰がいるのです?」
「清掃員の中嶋兵次郎です」
と、鈴木巡査。その名は小波津さんの聴取の時にも聞いた。
「どんな人ですか?」
鈴木巡査は面倒臭そうに教えてくれた。
「歳は二六。四ヶ月前からここの清掃員をしています。お聞きの通り、この六階の商品棚に血文字で彼の名前が書かれていたので連れて来ました。本人は何の事か分からない、と。沖塩氏の事も知らないと言っています。ちなみに昨日は九時まで働いたそうで」
「血文字が書かれた商品棚はどこですか?」
鈴木巡査は階の中心にある昇降機の近くを指差した。
そこには、下段は引き出しになっている大きな棚があった。色は焦茶。昇降機から降りた客の目にすぐ停まるように置いてある。上半分は色取り取りの着物や甚平が畳まれて置いてあった。
側に行ってみると棚の後ろに、小さくカタカナで「ナカジマ」と書いてあった。血の色が黒っぽいせいと、字がまるで木の模様のように見えて、一瞬見ただけでは気付かないものだった。
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