探偵三兄弟の帝都事件簿

ヲダツバサ

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第一章 浅草十二階バラバラ殺人事件

1-31 被害者

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 全て聞き終えると、長兄は声を上げて笑った。

「お前も探偵になるかい?」

 どうやら僕がなかなか鋭い推理をしたようだ。素人にしては、という意味で。

「こいつ、なかなか勘が良いんだ」

 次兄も長兄に明るい報告をした。

「修助、この後も弦助の面倒を看てやってくれ。私はこれから、佐藤警視と共に被害者の遺族に会ってくる」

「遺族? 被害者の身元が分かったのですか?」

 僕は身を乗り出して聞いた。

「ある程度ね。被害者の名は沖塩伊太夫おきしおいだゆう。四二歳。銀座に居を構える政府高官だ。外交関係の」

「被害者は政治家だったのですか。首の無い死体で顔が分からないのに、どうして」

 僕の疑問に長兄はスラスラと答えてくれた。

「たしかに胴体も腕も脚も衣服を纏っていなかったが、右脚が見つかった最上階にある物が落ちていた。身分証だ。もちろん沖塩おきしお氏の。氏は昨日の夕刻から行方が分からなくなっている。仕事が終わって帰宅したはずだが、使用人達が帰っていないと証言している」

「奥方や、ご子息は?」

「彼は未婚で、養子もいない。複雑な生まれで、血の繋がっていない父がいるだけだ。現在病気のため入院中。聞き込みによると、回復しないだろうと。精神面の事を考え、沖塩氏の死は伝えない方針だ」

「たとえ元気でも沖塩氏の事は何も知らなそうですね」

「うむ。寝たきりで、かろうじて会話が出来る状態らしいからな。あと使用人達によると、最近不審な人物が沖塩邸の周りをうろついていたらしい」

「最近とは、具体的にいつ頃から?」

「一、二週間前と言っていた。若い男で、沖塩氏を待ち伏せしているように見えたと」

「沖塩氏と直接会ったのでしょうか?」

 僕が色々尋ねていると……

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