探偵三兄弟の帝都事件簿

ヲダツバサ

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第一章 浅草十二階バラバラ殺人事件

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「そういえば舞助兄上は?」

 おそらく警察の仕事で浅草十二階にいるのだろうが会えなかった。

「しばらく忙しいのでしょうか」

 残念に思うと、後ろから声がした。

「その通り」

 懐かしい声だった。

「しかし、お前の顔を見に来る時間はあるのだよ」

 僕は振り向いた。記憶の中より大人になった長兄が、穏やかな佇まいでそこにいた。

「舞助兄上、ご無沙汰しております」

「会えて嬉しいよ、弦助。よく来たね」

「あっという間の旅でした。あ、これ」

 僕は長兄に頼まれた、栗の入った巾着袋を渡した。嬉しそうに笑ってくれて安心した。 

 長兄は最後に会った時より髪が伸びていた。世間的には短髪だが襟足が長い。顔は相変わらず父上そっくりで、高い鼻と眠そうな垂れ目が、長兄の持つ優しさと賢さを現していた。新品の背広に身を包み、襟締も見事に似合っている。

 長兄はすっかり東京に染まったのだと少し寂しくなった。けれど中身は変わっていなかった。

「栗をこんなに沢山ありがとう。荷物を増やして悪かったね」

「いえ。これからお世話になるのに、そんな物しか渡せなくて申し訳ないです」

「何を言うんだ。末の弟が医者を目指して、遥々東京まで一人で来るなんて、こんな誇らしい事は無い。良いかい、何があっても腐らず頑張るんだよ」

「はい。そう言って頂けて嬉しいです。頑張って特待生になります」

「無理はするな。学費だって、いざとなれば私が肩代わりする」

「そんな、やめて下さい。兄上の足を引っ張りたくありません。警官の仕事は大変なのでしょう?」

「え? 修助から何も聞いてないのかい?」

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