探偵三兄弟の帝都事件簿

ヲダツバサ

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第一章 浅草十二階バラバラ殺人事件

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「おえっ」

 死体見分後、僕は外の空気を吸っていた。浅草十二階からも離れ、隅田川の川原に直接座っていた。

 死体の血は乾いていたが、仄かに匂った。あの乾き具合からして、死後から半日は経ったものだろう。

「しばらく赤い物は見たくない」

「いやぁ、お前はよくやったよ」

 顔の青い僕の隣に、真逆の高揚した次兄が立っている。

「お前、何故あのエレベーターが殺人現場ではないと分かった?」

「最初からです。まず、その殺人現場という言い方が引っかかりました。死体発見現場ではなく、殺人現場。第一発見者も殺されたところを見た訳ではなく、あくまで死体を見つけただけなので。手がかりが少ないと言っておきながら、殺されたのはここだと決めつけているのが早計だと思いました。今思えば、あれは兄上が僕にカマをかけたのですね」

「うん。他には?」

 詫びは無く、次兄は膝を曲げ、覗くように僕の顔を見つめた。あそこが殺人現場でない事、次兄は知っていたのだ。

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