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第一章 浅草十二階バラバラ殺人事件
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浅草寺の時の鐘が微かに聞こえた。昼まであと二時間。
浅草公園六区に入って、すぐその建物は見えた。まるでこの東京全土を見張っているかのような看守塔のごとく威厳があり、遮る物が何も無いほど高い建物だった。地元の大と同じくらい高い建物じゃないか。
だからこそ待ち合わせ場所に丁度良い。僕は浅草十二階を見上げながら、迷う事無くそのふもとに辿り着いた。入り口の石段には、これまた多くの人々が集まっている。しかも何やら異様な雰囲気だ。
「この人達も皆、この塔に登りたいのか」
僕は呆気に取られた。これほど人気のある場所なら僕だって是非登りたいが、兄達と合流出来る自信が無い。向こうも僕を見つけられるだろうか。
人々はどこか不思議な様子だ。楽しみにしているというより、潜潜と話し合って心配そうな顔付きをしている。想像より高すぎて恐くなってしまったのだろうか。
一旦離れた。ずっと歩き続けて喉が渇いていた。どこかで休憩しようと、辺りを見渡した時。
「弦助」
懐かしい声が聞こえた。だが気のせいかと思って構わず行こうとすると、
「てめぇ、兄貴を無視するとは良い度胸じゃねぇか。せっかく迎えに来てやったのによぉ」
柄の悪い男に絡まれた。
「あ、兄上!」
「よく来やがった」
次兄・修助は僕の肩に腕を回して体重をかけてきた。
久しぶりに見る次兄の姿は、前髪を上げた短髪、胸元の開いた着物に袴、皮製の茶色い抱え鞄といった、東京の流行を全て取り入れたような伊達男であった。やや色白だが、胸板が厚くがっしりした体型なので病弱そうな印象は無い。おまけに長身、凛とした瞳、すらりとした顎……顔まで整っているから癪である。
父上にも僕にも似ていなくて本当に血の繋がりがあるのか疑いたくなった。
浅草公園六区に入って、すぐその建物は見えた。まるでこの東京全土を見張っているかのような看守塔のごとく威厳があり、遮る物が何も無いほど高い建物だった。地元の大と同じくらい高い建物じゃないか。
だからこそ待ち合わせ場所に丁度良い。僕は浅草十二階を見上げながら、迷う事無くそのふもとに辿り着いた。入り口の石段には、これまた多くの人々が集まっている。しかも何やら異様な雰囲気だ。
「この人達も皆、この塔に登りたいのか」
僕は呆気に取られた。これほど人気のある場所なら僕だって是非登りたいが、兄達と合流出来る自信が無い。向こうも僕を見つけられるだろうか。
人々はどこか不思議な様子だ。楽しみにしているというより、潜潜と話し合って心配そうな顔付きをしている。想像より高すぎて恐くなってしまったのだろうか。
一旦離れた。ずっと歩き続けて喉が渇いていた。どこかで休憩しようと、辺りを見渡した時。
「弦助」
懐かしい声が聞こえた。だが気のせいかと思って構わず行こうとすると、
「てめぇ、兄貴を無視するとは良い度胸じゃねぇか。せっかく迎えに来てやったのによぉ」
柄の悪い男に絡まれた。
「あ、兄上!」
「よく来やがった」
次兄・修助は僕の肩に腕を回して体重をかけてきた。
久しぶりに見る次兄の姿は、前髪を上げた短髪、胸元の開いた着物に袴、皮製の茶色い抱え鞄といった、東京の流行を全て取り入れたような伊達男であった。やや色白だが、胸板が厚くがっしりした体型なので病弱そうな印象は無い。おまけに長身、凛とした瞳、すらりとした顎……顔まで整っているから癪である。
父上にも僕にも似ていなくて本当に血の繋がりがあるのか疑いたくなった。
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