7 / 135
第一章 浅草十二階バラバラ殺人事件
1-6
しおりを挟む
僕の顔色を見て、行商人は別の助言を送ってくれた。
「まあ、焦る事は無いさ。東京はどんどん人口が増えている。そりゃつまり、働き口も多くなっているという事だ。選り好みしなきゃ職なんてすぐ見つかるよ」
僕らの話を黙って聞いていた使用人が、するっと会話に割り込んできた。
「このような、新聞にも目を通すと良い」
使用人の差し出す手には、両面印刷された二枚の紙。おおきな錦絵が描かれ、その周りに文が書いてあった。
これが、僕が初めて新聞を見た瞬間だった。
「何ですか、これ」
「新聞というのだよ。政治の話が中心の大新聞と、庶民の出来事や事件が中心の小新聞がある。これは最近発刊されたばかりの東京真報新聞という小新聞でな、端の方を見てみなさい」
「なになに……求人?」
「店なり組合なりが新しい働き手を求め、広告で募集しているのだ。年齢や健康など条件はあるがな」
「へえ。新聞か。これからは読んでみよう」
「東京で生きていくなら情報収集力は肝だぞ」
親切な使用人から、その新聞を譲ってもらった。日付を見ると、先週のものと、先々週のものだった。
「まあ、焦る事は無いさ。東京はどんどん人口が増えている。そりゃつまり、働き口も多くなっているという事だ。選り好みしなきゃ職なんてすぐ見つかるよ」
僕らの話を黙って聞いていた使用人が、するっと会話に割り込んできた。
「このような、新聞にも目を通すと良い」
使用人の差し出す手には、両面印刷された二枚の紙。おおきな錦絵が描かれ、その周りに文が書いてあった。
これが、僕が初めて新聞を見た瞬間だった。
「何ですか、これ」
「新聞というのだよ。政治の話が中心の大新聞と、庶民の出来事や事件が中心の小新聞がある。これは最近発刊されたばかりの東京真報新聞という小新聞でな、端の方を見てみなさい」
「なになに……求人?」
「店なり組合なりが新しい働き手を求め、広告で募集しているのだ。年齢や健康など条件はあるがな」
「へえ。新聞か。これからは読んでみよう」
「東京で生きていくなら情報収集力は肝だぞ」
親切な使用人から、その新聞を譲ってもらった。日付を見ると、先週のものと、先々週のものだった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
名探偵あやのん(仮)
オヂサン
ミステリー
これはSAISONというアイドルグループのメンバーである「林あやの」さんと、その愛猫「タワシ」をモデルにした創作ナゾトキです。なお登場人物の「小島ルナ」も前述のSAISONのメンバー(正確には小島瑠那さん)です。
元々稚拙な文章の上、そもそもがこのSAISONというグループ、2人の人となりや関係性を知ってる方に向けての作品なので、そこを知らない方は余計に???な描写があったり、様々な説明が不足に感じるとは思いますがご容赦下さい。
なお、作中に出てくるマルシェというコンカフェもキャストも完全なフィクションです(実際には小島瑠那さんは『じぇるめ』というキチンとしたコンカフェを経営してらっしゃいます)。
もしあの時君がいたら
花野 飛雨
ミステリー
公安に所属している僕は連続殺人事件について調べていた。その事件が過去にも起きていて、殉職した同僚が関わっていた。そして再び同じ事件が起きようとしている。
過去と現在が今繋がる!
果たして連続殺人事件の犯人は誰だろうか…
何の変哲もない違和感
遊楽部八雲
ミステリー
日常に潜む違和感を多彩なジャンル、表現で描く恐怖の非日常!
日本SFのパイオニア、星新一を彷彿とさせる独特な言い回し、秀逸な結末でお送りする至高の傑作短編集!!
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
幽子さんの謎解きレポート
しんいち
ミステリー
オカルトに魅了された主人公、しんいち君は、ある日、霊感を持つ少女「幽子」と出会う。彼女は不思議な力を持ち、様々な霊的な現象を感じ取ることができる。しんいち君は、幽子から依頼を受け、彼女の力を借りて数々のミステリアスな事件に挑むことになる。
彼らは、失われた魂の行方を追い、過去の悲劇に隠された真実を解き明かす旅に出る。幽子の霊感としんいち君の好奇心が交錯する中、彼らは次第に深い絆を築いていく。しかし、彼らの前には、恐ろしい霊や謎めいた存在が立ちはだかり、真実を知ることがどれほど危険であるかを思い知らされる。
果たして、しんいち君と幽子は、数々の試練を乗り越え、真実に辿り着くことができるのか?彼らの冒険は、オカルトの世界の奥深さと人間の心の闇を描き出す、ミステリアスな物語である。
イグニッション
佐藤遼空
ミステリー
所轄の刑事、佐水和真は武道『十六段の男』。ある朝、和真はひったくりを制圧するが、その時、警察を名乗る娘が現れる。その娘は中条今日子。実はキャリアで、配属後に和真とのペアを希望した。二人はマンションからの飛び降り事件の捜査に向かうが、そこで和真は幼馴染である国枝佑一と再会する。佑一は和真の高校の剣道仲間であったが、大学卒業後はアメリカに留学し、帰国後は公安に所属していた。
ただの自殺に見える事件に公安がからむ。不審に思いながらも、和真と今日子、そして佑一は事件の真相に迫る。そこには防衛システムを巡る国際的な陰謀が潜んでいた……
武道バカと公安エリートの、バディもの警察小説。 ※ミステリー要素低し
月・水・金更新
校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話
赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる