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第五章 桜とさくらの根深汁
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「考える時間が要るよな。俺はそろそろ帰るよ。綺麗な夜桜だった」
「あっ、彦さん」
立ちあがろうとする彦さんを制した。
アタシはちゃんと話したい事があった。
「あの、ね……。もしもの話よ? 彦さんは、その、婿に貰われるのって、抵抗ない?」
弱々しい風が吹くだけだった。
「いや、ほんと、ただの世間話だから」
「……」
「な、なんていうか、男の人ってそういうの、どう考えているのかな、って」
「抵抗は、ない」
「えっ」
あまりにもアッサリと答える彦さん。その目は桜の木からアタシに向けられた。
「自分が選んだ人と一緒にいられるなら、何でも構わない」
彦さんは立ち上がった。
「それじゃ、もう行くよ。ご馳走様」
「……お粗末さまでした」
「おタキさんなら、落ち着いて作れば上手くいくさ」
「ありがとう。おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
彦さんは土間へ行き、草履を履いた。アタシは立ち上がって、彦さんを見送るため外に出ようとした。
「ここで良い」
しかし彦さんに止められた。
「あっ、彦さん」
立ちあがろうとする彦さんを制した。
アタシはちゃんと話したい事があった。
「あの、ね……。もしもの話よ? 彦さんは、その、婿に貰われるのって、抵抗ない?」
弱々しい風が吹くだけだった。
「いや、ほんと、ただの世間話だから」
「……」
「な、なんていうか、男の人ってそういうの、どう考えているのかな、って」
「抵抗は、ない」
「えっ」
あまりにもアッサリと答える彦さん。その目は桜の木からアタシに向けられた。
「自分が選んだ人と一緒にいられるなら、何でも構わない」
彦さんは立ち上がった。
「それじゃ、もう行くよ。ご馳走様」
「……お粗末さまでした」
「おタキさんなら、落ち着いて作れば上手くいくさ」
「ありがとう。おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
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「ここで良い」
しかし彦さんに止められた。
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