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第二章 おふくろの味としじみ汁
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「当てならあるわ。火事の前に山川屋があった場所の近くで、味噌を扱う問屋がなかったか調べてみる。そこの味噌を、山川屋の奥さんが使ってた可能性は高いでしょ。そこで故郷と同じ味噌を扱っていたなら、尚更。それに、具には水菜と豆腐を使ってた事は分かってるわ。他にも何か組み合わせたかもしれないけど、基本的な味は変わらないはず」
だが長い試作になりそうだ。そう考えると、試作に使う時間や費用は、全部こちらが負担する事になる。得の無い代償で、赤字だ。
だから母は止めたのか。今更分かってきた。
やはりアタシはまだまだ世の中を分かってない子供で、母は一人の大人なのだ。失態を通して身に染みる。
とは言え、一度引き受けた事をあっさり諦める訳にもいかない。やるしかないんだ。
アタシの心境を、彦さんは見抜いたようだ。
「独りで頑張るな」
「そのつもりよ。いざって時は、彦さんも助けてくれる?」
「勿論だ」
「それを聞いて元気が出て来たわ。ありがとう」
雑踏が遠くに感じる。
アタシはさくらへ帰る前に本心を伝えた。
「その味噌汁が完成したら、またさくらの評判が上がるかもしれない。そしたら、あの命の恩人の耳にまで届くかもしれない。さくらに、アタシに、興味を持ってくれるかもしれないわ!」
軽い足取りでアタシは店内に戻った。結局、全てはあの人のため。そりゃ少しはトモミの期待にも応えたいとは思ってるけど。
報酬が無いなら、ちょっとぐらい夢見ても良いじゃない。
どうなるか分からないけど、どうにかなるさ。全力で頑張っていれば最大限の結果が待ってるはず。
彦さんのおかげで、弱気なんて一瞬で吹っ飛ばせたアタシだった。
夜。夕餉の……山かけご飯と、こんにゃくの味噌田楽、母お手製のきゅうりの塩漬けを食べた後……アタシと父と母は一階に集まった。姉には事情を話して二階に居てもらった。
「あなた、おタキがまた変な事を始めようとしているんです。何か言って頂戴」
「うむ。既に詳しく聞いてる」
「ここは船宿であって料理屋じゃありません。おタキに任せているのは、あくまで休憩処。そっちばかり有名になっても困るんだよ。二足の草鞋は履けません。料理屋の方が人気になって、おタキがお嫁に行ったらどうするの。上がりすぎた料理屋の評判を、誰が守るの」
「たしかにな。将来の事を考えると、船宿だけで生活出来るようにならんと」
「それなのに、風変わりなお客が来るほど話題になってしまいました。今日来てた、あの女の子達は何だい?」
母はアタシに尋ねた。鼻の穴が膨らむほど興奮している。
「べつに、何でもありません。たまたま来ていたお客さんです」
だが長い試作になりそうだ。そう考えると、試作に使う時間や費用は、全部こちらが負担する事になる。得の無い代償で、赤字だ。
だから母は止めたのか。今更分かってきた。
やはりアタシはまだまだ世の中を分かってない子供で、母は一人の大人なのだ。失態を通して身に染みる。
とは言え、一度引き受けた事をあっさり諦める訳にもいかない。やるしかないんだ。
アタシの心境を、彦さんは見抜いたようだ。
「独りで頑張るな」
「そのつもりよ。いざって時は、彦さんも助けてくれる?」
「勿論だ」
「それを聞いて元気が出て来たわ。ありがとう」
雑踏が遠くに感じる。
アタシはさくらへ帰る前に本心を伝えた。
「その味噌汁が完成したら、またさくらの評判が上がるかもしれない。そしたら、あの命の恩人の耳にまで届くかもしれない。さくらに、アタシに、興味を持ってくれるかもしれないわ!」
軽い足取りでアタシは店内に戻った。結局、全てはあの人のため。そりゃ少しはトモミの期待にも応えたいとは思ってるけど。
報酬が無いなら、ちょっとぐらい夢見ても良いじゃない。
どうなるか分からないけど、どうにかなるさ。全力で頑張っていれば最大限の結果が待ってるはず。
彦さんのおかげで、弱気なんて一瞬で吹っ飛ばせたアタシだった。
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「べつに、何でもありません。たまたま来ていたお客さんです」
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