【完結】失くし物屋の付喪神たち 京都に集う「物」の想い

第5章 ロケット

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　不思議と、怒りは湧きませんでした。ドス黒い悲しみが腹の底に溜まっていくだけです。

「何故そんな事を……？」

「聞くまでもないだろう。兄は両親から全ての期待を寄せられ、希望の象徴のように扱われていた。何よりも大事にされていた。対して俺は、居ても居なくても良い存在。兄の引き立て役で、奴を支えるためだけに生きていた」
「……嫉妬したのですか」

　叔父は敵ですが、その気持ち、よく分かります。

　まるで私じゃないですか。

　私も兄しろがねに全てを奪われた。両親も祖父母も、関心を寄せるのは兄だけ。私はただこき使われるだけ。どんなに尽くしても、私に光が当たる事は無い。

　兄だけでなく、周りの人間も恨むようになっていく。みんな、幸せそう。ただの普通の生活に憧れる。私は誕生日もクリスマスも家族からプレゼントをもらった事は無かった。プレゼントの中身に文句言っている子達が羨ましい。

　そんな苦しみを叔父も感じたのかと、ほんの少しだけ切なくなりました。