【完結】失くし物屋の付喪神たち 京都に集う「物」の想い

ヲダツバサ

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第5章 ロケット

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 母の部屋の前にいます。これから話し合うつもりなのですが、少し緊張します。母が母である事に変わりはありませんから。やはり動物の本能として母親というのは特別なのでしょうか。

 もし、今、美雲丸の名を呼べば……彼はきっと出て来てくれます。優しい言葉をかけてくれます。確信します。

 でも、今じゃない、本当に必要なのは。

 それに、愛する者には幸せな時に会いたい。

 美雲丸に抱いていた気持ちは、愛ではあったけど恋じゃなかった。今なら分かります。

 彼は、私の半生にずっと付き添ってくれた、魂の片割れなのです。だから、愛おしいのは当たり前なのです。

 これからも、ずっと。

 それが分かった今の私が、今までの私より弱い訳にはいかない。

 母の部屋に繋がるドア。その取手に手をかけました。

「お母さん」

 ノックもせず突然入ったので、母は激怒しました。

「いきなり入って来ないで! マナーを知らないの? 何なのよ!」

 私は出生届のコピーを見せました。
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