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第5章 ロケット

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 昼休み。

 私は飲み物を買うため、校舎裏の自販機に向かっていました。中庭に面した通りに四台並んでいるのです。

 混んでいるかと思ったら、そうでもありませんでした。まばらに人が点在しているだけで、用が済むと次々に去って行きました。後から新しく来る人はいません。自販機を利用しようとしてるのは私だけになりました。

 ペットボトルの麦茶を買った、その時。

「こがね?」

 明るくも、高すぎない女子の声。後ろから呼ばれました。

 振り返ると水口先輩が立っていました。ダークブラウンのショートヘア。ぱっちりとした睫毛で大きく見える瞳、整った形の唇。今すぐ芸能人になれそうな美人です。セーラー服の上にカーディガンを羽織っていて、寒いのが苦手なようです。

「あっ。みーちゃ……水口先輩、お久しぶりです」

 水口先輩とは夏休みが始まるまで、ほぼ毎日会っていました。家が近いので、通学時間が同じで、一緒にバスに乗っていました。

 竹内くんも一緒に。いつも三人で登校していました。
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