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第5章 ロケット

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 今まで鴫野宮家でどんな風に過ごしてきたかを、五分にまとめて上げて話しました。

 赤松さんは、すぐには信じられないほどショックを受けていました。

「何それ……あなた……そんなっ」
「簡単に言うと、私は家族に優しくされた事なんて一度もないよ。でも、私も悪いんだ。怖いからって逆らわないでいたから」
「あの、こんな言い方されたら嫌な気持ちになるかもだけど、それって……虐待じゃない?」
「うーん。どうだろうね。暴力は無かったし」
「暴言や恫喝も、暴力よ。そうやってあなたの反抗心が芽生えないようにしたのよ。自分達の言いなりにするために」
「まあ、そうかも。だからって警察や児相に助けを求めようとは思ってない。付喪神達に出会えたのは幸運だったと思ってるし、美雲丸と離れたくないし、何より……あと2年で高校卒業したら自由の身だ」

 未来に希望はあるのです。諦めなければ。

「そうね。ところで、美雲丸って?」
「私の家にある日本刀の付喪神。私が初めて出会った付喪神なの」
「男の人の姿?」
「うん」

 それを聞いて赤松さんはニヤッと笑いました。
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