【完結】失くし物屋の付喪神たち 京都に集う「物」の想い

ヲダツバサ

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第3章 万年筆

3-30

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 私は返事も相槌も出来ず黙っているしかなくて、申し訳ない気持ちになりました。美雲丸がいないように振る舞うのは罪悪感がありました。

 少し経つと、美雲丸の気配が無くなり、彼が去ったのだと分かりました。美雲丸が消えてから、やはり返事ぐらいすれば良かった、せめて頷けば良かったと後悔しました。

 彼を悲しい気持ちにさせていたら、どうしよう……。

 結局、私が一番悲しませたくない人は美雲丸なんだよな……と深く自覚しました。

 もう美雲丸に心配かけないようにしたい。

 顔を上げ、立ち上がります。周囲には誰もいません。

 雨の音の合間に、鈴虫の鳴き声が聞こえました。
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