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第3章 万年筆

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「あなた、これが狙いだったの?」
「違うよ! 弦介さんが赤松さんを知っていたなんて……」
「じゃあ、偶然なの?」
「そうだよ。信じて」
「……分かってる。あなたは人を弄んで楽しむ人じゃないわ」
「うん。だけどもしも、本気で悩んでいる事があるのなら、いつか話してね」

 赤松さんは「もちろん」と言って、買った花かんざしを鞄に仕舞いました。

「そろそろ帰りましょう。雨がまた降りそうよ」
「そうだね。弦介さん、また今度来ます」
「いつでもおいで。待っているから」

 店を出て行く赤松さん。私も後に続こうとしましたが、

「こがねさん」

 赤松さんに聞こえないよう、弦介さんに呼び止められました。
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