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第3章 万年筆

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「森さんはこのお店、長くやっていらっしゃるの?」
「いや、一ヶ月くらい前に曾祖父から受け継いだばかりです。再開店した、ってところですよ」
「随分お若い方だなぁ、と思ったの。失恋ですが、おいくつですか?」
「二十です」
「あら、私達と少ししか年が変わらないのね。立派だわ」

 弦介さんが二十歳なのは私も初耳です。大学生ぐらいだろうと予想はしていましたが、実際に聞くとやはり年上なのだと実感します。

 高校を卒業して、すぐ失くし物屋を受け継ぐ準備を始めたのでしょうか?

「赤松さん。あなた、赤松屋の娘さんでしょう。実は曾祖父に連れられ、何度か行った事あるのです。あなたは呉服屋の跡継ぎですね? 色々と苦労があるでしょう」
「……知っていましたか」

 弦介さんは頷きました。
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