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第2章 手帳
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私は正直、明子さんにイライラしていました。自分の事情や価値観ばかり押し付けて来るのは、私の家族と同じだから。
そして、そんな縛られた生活から抜け出せた祐美さんを羨ましく思っていました。嫌なものすべて捨てて自由になるなんて、憧れるほど遠い存在です。
モモコの言った言葉のように、私が耐え続けた日々も、いつか財産と呼べる日が来るのでしょうか。
「いつまでも手帳が手放せないなんて、祐美が手放せないなんて、そっちの方が辛いの。お別れして、もっと素敵な人になって。祐美を育てた事を誇りに思いながらも、自分と彼女は別の人間なのだと切り離して。別の場所で別の人生を生きるのが普通なの。それに気付いた時、きっと祐美は帰って来る」
「……本当? また私を好きになってくれる?」
声を詰まらせながら、明子さんが尋ねました。モモコは首を横に振ります。
「分からない。時間はかかると思うの。あなた次第だよ。ただ、私の願いは、ふたりが仲良くなる事だから……頑張ってほしい」
「……ああっ……私……」
「過ちを犯すのは仕方ない。でも、そこから何も学べないのは愚かなの。避けないで、受け止めて。祐美がいなくても生きていけるほど強くなれば、祐美も頼もしい母だと感じてくれる」
「……そうよね」
「私はあなたを幸せにしたいから、あなたの元へ帰りたくないの。だから……さよなら」
「ええ、ありがとう……さ……よなら」
持ち主と再会したい付喪神もいれば、別れを望む付喪神もいる。
どちらも、持ち主を愛しているから。
そして、そんな縛られた生活から抜け出せた祐美さんを羨ましく思っていました。嫌なものすべて捨てて自由になるなんて、憧れるほど遠い存在です。
モモコの言った言葉のように、私が耐え続けた日々も、いつか財産と呼べる日が来るのでしょうか。
「いつまでも手帳が手放せないなんて、祐美が手放せないなんて、そっちの方が辛いの。お別れして、もっと素敵な人になって。祐美を育てた事を誇りに思いながらも、自分と彼女は別の人間なのだと切り離して。別の場所で別の人生を生きるのが普通なの。それに気付いた時、きっと祐美は帰って来る」
「……本当? また私を好きになってくれる?」
声を詰まらせながら、明子さんが尋ねました。モモコは首を横に振ります。
「分からない。時間はかかると思うの。あなた次第だよ。ただ、私の願いは、ふたりが仲良くなる事だから……頑張ってほしい」
「……ああっ……私……」
「過ちを犯すのは仕方ない。でも、そこから何も学べないのは愚かなの。避けないで、受け止めて。祐美がいなくても生きていけるほど強くなれば、祐美も頼もしい母だと感じてくれる」
「……そうよね」
「私はあなたを幸せにしたいから、あなたの元へ帰りたくないの。だから……さよなら」
「ええ、ありがとう……さ……よなら」
持ち主と再会したい付喪神もいれば、別れを望む付喪神もいる。
どちらも、持ち主を愛しているから。
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