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第2章 手帳

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私は困惑しながらも、掠れた声で「はい」と返事しました。
「君の料理は好きだから、これからも食べさせてほしいな」

 私は気まずくなって、明子さんを探しに行くという建前で店の外に出てしまいました。なんと情けない。感謝も謝罪も、伝えた量は不十分です。自分が子供なのだと実感させられました。

 大人の基準は明確ではありませんが、自力で稼いだ事の無い私はお子様なのです。

 とぼとぼと、ゑびす神社の前まで移動しました。

 約5分後、神社の北側の交差点から明子さんが現れました。旦那さんはいません。

「あら、もう来てたの?」
「はい。ついさっき」
「待たせたかしら? ごめんなさいね」
「謝る必要無いです。では、早速ですが……あの店です」
「あれは、雑貨屋? 骨董屋にも見えるわ」

 いつの間にか、あかり堂の表に提灯が下げられていました。ルリナが宿っている提灯です。
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