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第1章 タイムカプセル

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 おじさんはきっと、時太以外に言われたら聞く耳を持たなかったでしょうね。

 ふたりが微笑み合っているように感じました。 

 こんなに暖かく眩しいものに触れたのは初めてです。 

 突然、膝の上に置いていた手に、水滴が落ちて来ました。何だろうと見上げましたが、雨漏りも何もありません。

「こがねの涙だよ」

 美雲丸が教えてくれました。

「こがね、泣いている」
「えっ」

 びっくりした拍子に、頬に水の筋が流れました。そっと目元に触れてみましたら、たしかに水分が集まっています。

 でも、鴫野宮家でどんなにしごかれても涙を流さなかった自分が、他人の感情に揺さぶられて泣くなんて、認め難い事実でした。
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