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第1章 タイムカプセル

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 それに、ある不安もあって脚が震えだしました。その不安とは何か。

 さっきの祖母とのやり取りです。大激怒しているでしょうね。育ててやっているのに、あんな態度を取るなんて何様のつもりだ、と。祖母だけでなく家族全員が私を責め立てるでしょう。何を言われるのやら。

 いっそ帰りたくないです。このまま夜の闇に消えてしまいたい。

 だけど、それでは幸せになれない。

 生きる事は苦しい事だけど、幸せというものもこの世界にしか存在しないのです。少なくとも、この世界にはまだ私が出会ってないものが沢山ある。それらに出会いたい。人も、物も、出来事も。

 怒鳴られ、なじられる生活に諦めてはいますが、鴫野宮家を去った後の生活に希望を抱いています。

 せめて最後に、家族に言いたい事全部言ってから去ってやる。

 そう決意しました。

 なんて事を考え、うろうろ歩き回り、ゑびす神社の正面に差し掛かった時です。神社の向かいに不思議なお店を見つけました。

 見た目は周囲のお茶屋と似たような造りです。提灯も下げています。ただ、その提灯の色。目を惹かれました。

 赤ではなく、青い火が灯っています。

 青く光る提灯は、周りのお店の存在感を薄くするほど異様な雰囲気を放っていました。

 なんだか、人ならざる者が運営していそう……そう思いました。
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