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第1章 タイムカプセル

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 断るのが可哀想で、私は頷きました。

 美雲丸は嬉しそうに微笑みました。

 穏やかな沈黙が訪れた、その時でした。 

「こがね、帰っているのかい?」

 祖母の、針のように尖った声が私を貫きました。1階から聞こえてきます。

「それならさっさと調理場へ来な! 今日の朝ごはんは何だい? 不味くて臭くて、ありゃ豚のエサだよ。料亭の娘だというのに、恥ずかしいね。その料理の腕を叩き直してやるから、調理場へ来るんだよ!」

 そんなに酷い朝ごはんだったでしょうか。白米、あさりの味噌汁、焼き鮭、肉豆腐、和風ドレッシングをかけたサラダといった感じで、比較的簡単に作れる物ばかりだったんですけど……。
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