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第1章 過去と今とダン・エルトン
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しおりを挟む「そうだ。そんな人間が階段を上り下りするには、手すりにしがみつかなきゃ無理だろう」
「……なるほど」
誰の発した声か、一瞬分からなかった。が、聴こえた方向からしてエリオットの上司だと判断した。久しぶりに聴く、懐かしい声だ。
続けて何も言われなかったので、俺も推理を再開する。
「ブレンダは五分間、事務室に居たと証言している。でも腰が抜けたのが嘘なら、床に座り込んでいたのも嘘だな。その時事務室を漁ったんだろ。金庫の鍵を探すために。ブレンダ、そろそろ正直に話したらどうだ?」
「私、あの、違います……全部あなたの出鱈目よ!」
「証言と行動が微妙に一致してねぇよ」
「それだけで疑うのですか」
「証拠がある」
「えっ」
ハッタリだが何とかなるだろう。
「お前のロッカーにある紙は、母親の治療費の請求書だろ」
ブレンダは口を閉じた。当たってビックリしてるのはこっちなんだがな。
「あとロッカーにあった花はアストランティアじゃねぇか?」
スプレー咲きでドライフラワーとして使われ一輪でも華があるもの……しかも花言葉にも拘ったとしたら……。決めてはシェリーの描いた絵だったが。
「あれは店長レイからのプレゼントなんだろ?」
「……貴方みたいなスラムの不良に、花の知識があるなんてね」
ブレンダは笑った。愛想の良いものではない。
「赤いアストランティアの花言葉は、愛の渇き。レイさんは私の手に堕ちかけていましたが、私の企みにも気付いていました。それでも愛してくれた。とはいえ、その愛は恋心じゃなくて、他者を労わる心でした。私にはない、美しいもの」
「策の途中だった訳だが、自分の罪を認めるか? ブレンダ」
ブレンダは真っ直ぐ俺を見つめた。この表情は知っている。後ろめたい事がある者の、覚悟のそれだ。
「俺の推理で、何か抜けていたところは?」
ブレンダはゆっくり瞼を閉じた。
「ありません。レイさんを誘惑していたのも、彼が死んだ時金庫の鍵をあちこち探したのも、全部事実です。でも……」
「レイを殺したのはお前じゃない」
ブレンダはまじまじと俺を見上げた。
ああ、犯人じゃないのは分かってる。
「じゃあ、ブレンダじゃないとしたら、弟である副店長レオ?」
シェリーが静かに尋ねた。
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