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第373話

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「心配には及びません。こちらには3大貴族の方が2人もおりますから」

姫がマズローを安心させるように言う。

「・・・畏まりました。では、行って参ります」

マズローは貴賓席にいるバルム家当主とマギル家当主を見てから納得したように頷くとリングの方に向かって跳ぶように移動していった。



(・・・どうやら、決着がついたようだ)

バルム家当主であるシェリルが気を失った娘の目が覚めるのを待ちながらリングの方を見ていると後ろから声を掛けて来るものが居た。

「どうやら、終わったようだな」

「・・・バルムか。そのようだな」

後ろに来た者がバルム家当主であるゾルムであることを理解するとシェリルが同意する。

「ひとまずは待機しておくべきだろうな」

ゾルムが先ほど姫の命を受けてリングに向かった護衛騎士隊長の行動を思い出しながらシェリルにそう言う。

本心で言えばゾルムは早くアリシアとそしてグレイのいる場所に向かいたかった。

(だが、流石に姫様を残して行くわけにもいかないからな)

「ああ。そうだな。敵があいつ一人である保証もないしな」

「単独犯では無いと思うか?」

シェリルの言葉を聞いたゾルムは自分も気にしていた事を尋ねる。

「正直言ってそれは分からない。だが、警戒を緩める訳にもいくまい。少なくとももう暫くは様子を見ておくべきだろう」

「そうだな」

シェリルの意見に同意するゾルム。

「うっ・・・」

その時、シェリルの娘が呻き声を上げ、目を覚ました。

シェリルはその事にすぐに気が付くと、声を掛ける。

「ユリアッ!目を覚ましたか!!」

「えっ?母上・・・?」

ユリアはまだ意識がはっきりしないのか自分がどういう状況なのかを理解していなかった。

「ああ。そうだ。体は何とも無いか?」

「は、はい。痛みとかも何もありませんが・・・あ!?あの男はどうなったのですか!?」

ユリアはシェリルの言葉に答えながら、ようやく意識がはっきりしたのか慌てて起き上がると襲撃者の事を思い出し周りを見回す。

「大丈夫だ。恐らく、あの男は倒された」

動揺しているユリアに向かってシェリルの代わりにゾルムが答える。

「ゾルムおじ様。倒されたというのは真ですかっ!?もしかして、アリシアが?」

ユリアは母とは違う声の主を見ると、そう尋ねる。

「いや、娘も善戦はしたのだが倒したのは別の者だよ」

「・・・えっ?一体それはどういう・・・」

ユリアはゾルムが言う言葉が信じられなかった。

(あのリングには外から入ることのできない強固な結界が張られていたはずだ。それを破り、かつあの化け物のような男を倒したというのか・・・到底信じられない。だが、ゾルムおじ様がそのような嘘をつく訳も無いし本当の事なのか?)

ユリアはまだ混乱していた。
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