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第334話
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エルリックは助けに来たセリーに駆け寄ると、
「どうしてここに?」
当初の予定であればセリーが駆けつけてくれるには探す予定の3つの通路の内、エルリックが探していない2つの通路を探し終えてからのはずだ。
2つの通路を探したと考えるには早すぎる。
エルリックが当然の疑問を投げかけるが、セリーはそれには答えず、
「・・・今はグレイを助けるのが最優先」
「そうだった・・・」
エルリックは質問の答えが気になったが、今は我慢してグレイが閉じ込められている部屋に駆け寄る。
「エルっ!!無事かっ!?」
グレイにも状況が動いたのが気配で分かったのだろう。
扉を殴りつけるのを止めてエルリックに尋ねる。
「うん。敵は逃げたから安心して、今度こそ扉を壊すから離れてて」
「そうか。分かった。ありがとう」
グレイはほっとしながら扉から離れる。
だが、その時、無情にも控室の音声伝達機からタイムリミットが告げられる。
『それでは、最後の出場者をご紹介致します!!魔法学園4年生、グレイ・ズー選手!!!』
実況の声がグレイの名前を呼んだ。
呼んでしまったのだ。
「そんな・・・」
エルリックが力なく、膝から崩れ落ちる。
今、グレイを外に出せたとしても、到底間に合わない。
リングから離れたここまで助けに来たエルリックとセリーにはそれが痛いほど分かった。
「「「・・・」」」
しばらく経っても出場選手がやって来ないため、あり得ないくらいの静寂が【魔法武闘会】会場を支配する。
『・・・もう一度だけ、お名前をお呼びします。それでも来られない場合には不戦敗と致します』
実況がそのように告げる。
(間に合いませんでしたか・・・)
姿を現す様子がないことを察し、アリシアがそっと目を閉じる。
(・・・仕方がありません。グレイの分まで私《わたくし》が頑張りますわ)
改めて覚悟を決める。
そして、閉じていた目をゆっくりと開く。
『それでは、もう一度お名前をお呼び致します。魔法学園4年生、グ・・・』
実況が再度名前を呼ぶ寸前であった。事態が大きく変わったのは。
アリシアが上を見たのは偶然であった。
覚悟を決めた後、何となく空を眺めたのだ。
雲一つない空に一点の影があった。
(鳥ですか?)
最初は、天高く鳥が飛んでいるのだと思った。
だが、その影は段々と大きさを増していったのだ。
(あれは・・・人ですわ!)
アリシアがそれが人であると気が付いた時にはリングの端に飛び退きながら、大声を上げていた。
「今すぐ、リングから離れてくださいっ!!!」
アリシアの行動と叫び声に反応したのは数人。
それから直ぐに、
ドゴォォォォン
途轍もなく大きな音を出し、それはリングの中央に激突したのであった。
「どうしてここに?」
当初の予定であればセリーが駆けつけてくれるには探す予定の3つの通路の内、エルリックが探していない2つの通路を探し終えてからのはずだ。
2つの通路を探したと考えるには早すぎる。
エルリックが当然の疑問を投げかけるが、セリーはそれには答えず、
「・・・今はグレイを助けるのが最優先」
「そうだった・・・」
エルリックは質問の答えが気になったが、今は我慢してグレイが閉じ込められている部屋に駆け寄る。
「エルっ!!無事かっ!?」
グレイにも状況が動いたのが気配で分かったのだろう。
扉を殴りつけるのを止めてエルリックに尋ねる。
「うん。敵は逃げたから安心して、今度こそ扉を壊すから離れてて」
「そうか。分かった。ありがとう」
グレイはほっとしながら扉から離れる。
だが、その時、無情にも控室の音声伝達機からタイムリミットが告げられる。
『それでは、最後の出場者をご紹介致します!!魔法学園4年生、グレイ・ズー選手!!!』
実況の声がグレイの名前を呼んだ。
呼んでしまったのだ。
「そんな・・・」
エルリックが力なく、膝から崩れ落ちる。
今、グレイを外に出せたとしても、到底間に合わない。
リングから離れたここまで助けに来たエルリックとセリーにはそれが痛いほど分かった。
「「「・・・」」」
しばらく経っても出場選手がやって来ないため、あり得ないくらいの静寂が【魔法武闘会】会場を支配する。
『・・・もう一度だけ、お名前をお呼びします。それでも来られない場合には不戦敗と致します』
実況がそのように告げる。
(間に合いませんでしたか・・・)
姿を現す様子がないことを察し、アリシアがそっと目を閉じる。
(・・・仕方がありません。グレイの分まで私《わたくし》が頑張りますわ)
改めて覚悟を決める。
そして、閉じていた目をゆっくりと開く。
『それでは、もう一度お名前をお呼び致します。魔法学園4年生、グ・・・』
実況が再度名前を呼ぶ寸前であった。事態が大きく変わったのは。
アリシアが上を見たのは偶然であった。
覚悟を決めた後、何となく空を眺めたのだ。
雲一つない空に一点の影があった。
(鳥ですか?)
最初は、天高く鳥が飛んでいるのだと思った。
だが、その影は段々と大きさを増していったのだ。
(あれは・・・人ですわ!)
アリシアがそれが人であると気が付いた時にはリングの端に飛び退きながら、大声を上げていた。
「今すぐ、リングから離れてくださいっ!!!」
アリシアの行動と叫び声に反応したのは数人。
それから直ぐに、
ドゴォォォォン
途轍もなく大きな音を出し、それはリングの中央に激突したのであった。
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