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第327話

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「ねぇ、セリー」

次々と紹介される出場選手を見ながらエルリックが隣にいるセリーに尋ねる。

「・・・うん。私も思ってた。エルが言いたいのはグレイの姿が見えないことについてでしょ?」

セリーはエルリックの言いたいことを聞く前に返事をする。

「えっ!?どうして分かるの?」

エルリックは驚いたようにセリーを見た。

「・・・何となく」

セリーはエルリックの言葉に濁したように答えるが実際は違った。

(・・・どういうわけかエルはグレイをいつも気にしているからすぐに分かるわ)

以前はもしかしてそう言う方向の趣味かと邪推したこともあったがエルリックがグレイに向ける目はそういうものではなく、尊敬に近いものだと今のセリーは理解していた。

「凄いなセリーは」

エルリックは一度セリーに対して感心してから、

「そうなんだ。僕たちから見えていないリングに向かう入口からの出場選手は出てきたのに、僕たちから見える入口にはグレイの姿が見えないんだ。これってもしかして・・・」

エルリックは疑問を言葉にするが最後まで言う前にセリーがエルリックの唇に指で軽く触れる。

エルリックは突然のセリーの行動にドギマギし、軽いパニックに陥る。

(えっ?えっ?一体何が??)

「・・・駄目よ。それ以上は口にしちゃ」

エルリックの動揺など、知らないかのように淡々と続けるセリー。

「わ、分かったよ」

「・・・よろしい」

エルリックが何とか返事をするとセリーが指を元の位置に戻しながら頷く。

そして、立ち上がる。

「?どうしたの??」

セリーが何故立ち上がったのかが分からず疑問符を浮かべるエルリック。

「・・・決まっている。グレイを助けに行くわよ」

セリーは歩き出しながらエルリックに告げる。

「っ!?うん!!」

エルリックは慌てて立ち上がるとセリーについて行った。



人混みを抜けたエルリックとセリーの2人は走りながら会話を再開させる。

「それで、どうするつもり?」

エルリックが先を行くセリーに尋ねる。

「・・・まずは、会場の外回りから出場者のいない場所に移動する」

「了解。その後はどうしようか?流石に出場者のところに行く道には警備がいるだろうし・・・」

エルリックが心配そうに懸念点を話す。

「・・・大丈夫。その問題に対しての策はある。ただ、これには時間が鍵。だから、今は急いで」

セリーが会話は終わりとばかりに無言で走る速度を上げる。

「了解!!」

エルリックもそう答えると走ることに注力する。

幸いなことに皆が全員リングに集中しているため会場の外回りを走る2人を気に留めるものなどいなかった。

「・・・」

「・・・」

2人は無言のままただただ走り続けた。
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