323 / 399
第322話
しおりを挟む
グレイやアリシア達はお互いに朝の挨拶を交わしてから、【魔法武闘会】会場に向かって歩いて行く。
普段使わない場所のため、校舎よりも距離がある。
「・・・一体いつの間に?」
丁度時間もある事だし、グレイが気になっていたことを尋ねる。
「ふふふ、私《わたくし》達が来たのはエルリックさんが姫様談義の佳境の時ですわ」
アリシアが笑みを浮かべながら、
「早く着いたものの待ち合わせの場所にいらっしゃらないので辺りを見回したら何やら話し合っているお二人をお見かけしましたのでセリーと一緒に近づいたという訳です」
アリシアの言葉に頷くセリー。
「・・・お陰でエルリックの普段見れない姿が見られた」
セリーもエルリックの様子が新鮮に映ったのか、満足そうに頷く。
「なるほど・・・」
「は、ははは・・・」
グレイは別にそこまで動揺する訳では無かったが、エルリックは恥ずかしそうに笑う。
グレイ以外に力説している姿を見られたのが思いのほか恥ずかしかったのだろう。
「そ、それより、アリシアさんは姫様にお会いしたことがあるの?」
エルリックが話題を変えるようにアリシアに尋ねた。
「はい。何度かお会いしたことがありますわ。先ほども申した通り、素晴らしい方ですわ」
流石は3大貴族の御令嬢。
姫様にも会ったことがあるみたいだ。
「へぇ、そうなんだ。お見かけするのが楽しみだなぁ」
エルリックが目を輝かせる。
グレイがエルリックの様子を見て苦笑していると視線を感じる。
見やるとアリシアがじっとこちらを見ていた。
「?どうした??」
グレイがアリシアの視線の意味を尋ねる。
「・・・グレイも姫様の事が気になるのですか?」
アリシアが少しそわそわしながら尋ねて来る。
「?いや。そんな余裕はないかな」
グレイはアリシアの質問の意図が読めず、正直に心中を話す。
エルリックが色々と話してくれていたから気を紛らわせられているがグレイの心の半分は今日の【魔法武闘会】への緊張で一杯であった。
「そうですか。グレイは普段通りの事をすれば良いのですよ」
何故かほっとした表情を見せた後、アリシアがグレイを安心させるように声を掛けてくれる。
「ああ。ありがとう。・・・あ、そうだ」
グレイはアリシアに礼を言った後、少し歩み寄ると、エルリックとセリーに聞こえないように小声で尋ねる。
「さっきエルに聖女も来られるって聞いたんだけど、多用するとやばいよね?」
「・・・そうでしょうね・・・グレイは注目されておりますし特に・・・」
グレイが聞きたいのは【エリクサー】の事だと理解したアリシアが表情に影を落としながら答える。
「やっぱりか。というか、何?その注目って??」
グレイはアリシアの気になった言葉に疑問符を浮かべる。
「はい。今は詳細は言えませんが、聖女様は自分と同じ村人という立場のグレイに注目しているようなのです」
まだ周りに人はいないとは言え、昨日の聖女との会話の内容をここで話す訳にもいかないアリシアは要点だけをグレイに伝える。
「・・・参ったな。分かった。気を付ける」
(ただでさえ勝てるか分からない試合がどんどん不利になっていくな・・・)
グレイは自分の中で嫌な予感がどんどん膨れ上がっていくのを感じた。
普段使わない場所のため、校舎よりも距離がある。
「・・・一体いつの間に?」
丁度時間もある事だし、グレイが気になっていたことを尋ねる。
「ふふふ、私《わたくし》達が来たのはエルリックさんが姫様談義の佳境の時ですわ」
アリシアが笑みを浮かべながら、
「早く着いたものの待ち合わせの場所にいらっしゃらないので辺りを見回したら何やら話し合っているお二人をお見かけしましたのでセリーと一緒に近づいたという訳です」
アリシアの言葉に頷くセリー。
「・・・お陰でエルリックの普段見れない姿が見られた」
セリーもエルリックの様子が新鮮に映ったのか、満足そうに頷く。
「なるほど・・・」
「は、ははは・・・」
グレイは別にそこまで動揺する訳では無かったが、エルリックは恥ずかしそうに笑う。
グレイ以外に力説している姿を見られたのが思いのほか恥ずかしかったのだろう。
「そ、それより、アリシアさんは姫様にお会いしたことがあるの?」
エルリックが話題を変えるようにアリシアに尋ねた。
「はい。何度かお会いしたことがありますわ。先ほども申した通り、素晴らしい方ですわ」
流石は3大貴族の御令嬢。
姫様にも会ったことがあるみたいだ。
「へぇ、そうなんだ。お見かけするのが楽しみだなぁ」
エルリックが目を輝かせる。
グレイがエルリックの様子を見て苦笑していると視線を感じる。
見やるとアリシアがじっとこちらを見ていた。
「?どうした??」
グレイがアリシアの視線の意味を尋ねる。
「・・・グレイも姫様の事が気になるのですか?」
アリシアが少しそわそわしながら尋ねて来る。
「?いや。そんな余裕はないかな」
グレイはアリシアの質問の意図が読めず、正直に心中を話す。
エルリックが色々と話してくれていたから気を紛らわせられているがグレイの心の半分は今日の【魔法武闘会】への緊張で一杯であった。
「そうですか。グレイは普段通りの事をすれば良いのですよ」
何故かほっとした表情を見せた後、アリシアがグレイを安心させるように声を掛けてくれる。
「ああ。ありがとう。・・・あ、そうだ」
グレイはアリシアに礼を言った後、少し歩み寄ると、エルリックとセリーに聞こえないように小声で尋ねる。
「さっきエルに聖女も来られるって聞いたんだけど、多用するとやばいよね?」
「・・・そうでしょうね・・・グレイは注目されておりますし特に・・・」
グレイが聞きたいのは【エリクサー】の事だと理解したアリシアが表情に影を落としながら答える。
「やっぱりか。というか、何?その注目って??」
グレイはアリシアの気になった言葉に疑問符を浮かべる。
「はい。今は詳細は言えませんが、聖女様は自分と同じ村人という立場のグレイに注目しているようなのです」
まだ周りに人はいないとは言え、昨日の聖女との会話の内容をここで話す訳にもいかないアリシアは要点だけをグレイに伝える。
「・・・参ったな。分かった。気を付ける」
(ただでさえ勝てるか分からない試合がどんどん不利になっていくな・・・)
グレイは自分の中で嫌な予感がどんどん膨れ上がっていくのを感じた。
85
お気に入りに追加
1,445
あなたにおすすめの小説
善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です
しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。
異世界を8世界ほど救ってくれって頼まれました。~本音で進む英雄譚~(仮)
八神 凪
ファンタジー
神代 陽(かみしろ はる)はゲームが趣味という普通の高校生。
ある時、神様軍団に召喚されて異世界を救ってくれと頼まれる。
神様曰く「全部で8つの世界」が危機に瀕しているらしい。
渋々承諾した陽は、「主人公」と呼ばれる特異点を救うため、旅立つことになる。
「俺は今でも納得してないからな!」
陽の末路や、如何に!!
スキルを極めろ!
アルテミス
ファンタジー
第12回ファンタジー大賞 奨励賞受賞作
何処にでもいる大学生が異世界に召喚されて、スキルを極める!
神様からはスキルレベルの限界を調査して欲しいと言われ、思わず乗ってしまった。
不老で時間制限のないlv上げ。果たしてどこまでやれるのか。
異世界でジンとして生きていく。
ドラゴンなのに飛べません!〜しかし他のドラゴンの500倍の強さ♪規格外ですが、愛されてます♪〜
藤*鳳
ファンタジー
人間としての寿命を終えて、生まれ変わった先が...。
なんと異世界で、しかもドラゴンの子供だった。
しかしドラゴンの中でも小柄で、翼も小さいため空を飛ぶことができない。
しかも断片的にだが、前世の記憶もあったのだ。
人としての人生を終えて、次はドラゴンの子供として生まれた主人公。
色んなハンデを持ちつつも、今度はどんな人生を送る事ができるのでしょうか?
スマートシステムで異世界革命
小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 ///
★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★
新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。
それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。
異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。
スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします!
序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです
第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練
第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い
第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚
第4章(全17話)ダンジョン探索
第5章(執筆中)公的ギルド?
※第3章以降は少し内容が過激になってきます。
上記はあくまで予定です。
カクヨムでも投稿しています。
リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる