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第322話

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グレイやアリシア達はお互いに朝の挨拶を交わしてから、【魔法武闘会】会場に向かって歩いて行く。

普段使わない場所のため、校舎よりも距離がある。

「・・・一体いつの間に?」

丁度時間もある事だし、グレイが気になっていたことを尋ねる。

「ふふふ、私《わたくし》達が来たのはエルリックさんが姫様談義の佳境の時ですわ」

アリシアが笑みを浮かべながら、

「早く着いたものの待ち合わせの場所にいらっしゃらないので辺りを見回したら何やら話し合っているお二人をお見かけしましたのでセリーと一緒に近づいたという訳です」

アリシアの言葉に頷くセリー。

「・・・お陰でエルリックの普段見れない姿が見られた」

セリーもエルリックの様子が新鮮に映ったのか、満足そうに頷く。

「なるほど・・・」

「は、ははは・・・」

グレイは別にそこまで動揺する訳では無かったが、エルリックは恥ずかしそうに笑う。

グレイ以外に力説している姿を見られたのが思いのほか恥ずかしかったのだろう。

「そ、それより、アリシアさんは姫様にお会いしたことがあるの?」

エルリックが話題を変えるようにアリシアに尋ねた。

「はい。何度かお会いしたことがありますわ。先ほども申した通り、素晴らしい方ですわ」

流石は3大貴族の御令嬢。

姫様にも会ったことがあるみたいだ。

「へぇ、そうなんだ。お見かけするのが楽しみだなぁ」

エルリックが目を輝かせる。

グレイがエルリックの様子を見て苦笑していると視線を感じる。

見やるとアリシアがじっとこちらを見ていた。

「?どうした??」

グレイがアリシアの視線の意味を尋ねる。

「・・・グレイも姫様の事が気になるのですか?」

アリシアが少しそわそわしながら尋ねて来る。

「?いや。そんな余裕はないかな」

グレイはアリシアの質問の意図が読めず、正直に心中を話す。

エルリックが色々と話してくれていたから気を紛らわせられているがグレイの心の半分は今日の【魔法武闘会】への緊張で一杯であった。

「そうですか。グレイは普段通りの事をすれば良いのですよ」

何故かほっとした表情を見せた後、アリシアがグレイを安心させるように声を掛けてくれる。

「ああ。ありがとう。・・・あ、そうだ」

グレイはアリシアに礼を言った後、少し歩み寄ると、エルリックとセリーに聞こえないように小声で尋ねる。

「さっきエルに聖女も来られるって聞いたんだけど、多用するとやばいよね?」

「・・・そうでしょうね・・・グレイは注目されておりますし特に・・・」

グレイが聞きたいのは【エリクサー】の事だと理解したアリシアが表情に影を落としながら答える。

「やっぱりか。というか、何?その注目って??」

グレイはアリシアの気になった言葉に疑問符を浮かべる。

「はい。今は詳細は言えませんが、聖女様は自分と同じ村人という立場のグレイに注目しているようなのです」

まだ周りに人はいないとは言え、昨日の聖女との会話の内容をここで話す訳にもいかないアリシアは要点だけをグレイに伝える。

「・・・参ったな。分かった。気を付ける」

(ただでさえ勝てるか分からない試合がどんどん不利になっていくな・・・)

グレイは自分の中で嫌な予感がどんどん膨れ上がっていくのを感じた。
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