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第321話

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「グレイ。続けていい??」

グレイがうーんと唸っていると、エルリックが話を続けて良いかを確認してくる。

相変わらず律儀な良い性格である。

「ああ。悪い。考え事をしていた」

グレイがそう答えるとエルリックが話を続ける。

「聞いて驚いてよ。もう一人は何と姫様がいらっしゃるんだっ!!」

エルリックが大げさに手を広げながらグレイに告げる。

「お、おお・・・」

グレイには何が凄いのかが分からない訳ではないもののエルリックのテンションに押され若干引き気味になりつつ返事をする。

「姫様は今年は残念ながらいらっしゃれない国王様の代わりにいらっしゃるのだけど、公式な場にほとんど出ない方で有名なんだよ」

「へぇ、珍しいな」

エルリックの言葉に興味深いと頷くグレイ。

普通貴族の御曹司や御令嬢は早い段階で社交界デビューをする。

それは息子や娘の将来のためになるべく早く周りに知って貰い、一族繁栄や維持に役立てるために他ならない。

優秀な子どもたちがいることを示すことは今後の付き合いに影響するからだ。

(まぁ・・・国王様と言えば謀反でも起こらなかったり余程の事が無い限り安泰だからそういうことをする必要は無いだろうが・・・)

「だよね!今までは姫様の事を溺愛している国王様が周囲の目に晒させたくないからと言って公務への参加を控えさせていたって噂だよ」

「ふーん。優秀な方では無いからと言う訳では無いんだ?」

グレイが可能性の一つを口にすると、エルリックの目がキラリと光る。

「とんでもない!全くの正反対だよ!!姫様は人の目に触れるところでのお顔見せは無かったけどまだ僕らと同じく十代半ばだって言うのに頭脳明晰で国王様を陰から支えていると言われている位なんだから」

「お、おう。凄い方なんだな」

「うんっ!!だからお見かけできるのが楽しみなんだよ。一体どのような方なのだろう」

エルリックが明後日の方向を見て目を輝かせる。

(変わったな)

グレイはそんなエルリックの様子を見て良い意味でそう思う。

何というか自然体で物事に興味を持っている様子だ。

(きっと妹さんの事で気を張っていたんだろう)

無理も無い。

明日をも知れない身の妹を心配して過ごしてきたのだ。

何事に対しても心の底から楽しめるはずが無かっただろう。

(良かったな。エル)

グレイはエルリックの変化を喜んだ。

「ああ。一体どのような方なのだろう」

「姫様は頭が良いだけでなく容姿も良くそれでいて性格も素晴らしい方ですわ」

「「っ!?」」

エルリックの言葉に対して後ろから掛けられた声に驚く二人。

すぐに振り返ると底にはアリシアとその後ろにセリーが居た。
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