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第304話
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「ふぅ」
今日もやってくる病人や怪我人の治療を終え、誰にも気づかれぬよう深い息を吐く美少女。
「聖女様、本日も本当にお疲れ様です」
近くに待機していたメイドがその美少女・・・聖女に声をかける。
「ありがとうございます。3年前に比べると大分楽になりましたのでそこまでではありませんよ」
聖女がメイドに笑いながら返す。
聖女という3大貴族と同等の人物ではあるか元々が村人だったこともあり、メイド相手であろうと丁寧な対応をする。
それが万人に慕われる理由の1つだろう。
もう何度目か分からないがそんな事を考えながらメイドは話を続ける。
「仰る通りですね。3年前は本当に大変でした」
当時は一代前の聖女が亡くなってからの期間が空いていたことから聖女でないと治せない病気や怪我を患った人々が沢山いた。
さらに聖女に成り立てで勝手が分からなかったこともあり毎日が火の車であった。
それこそ朝から晩までの治療、そして貴族となったことに対する様々な学ぶことがあり、眠る時間も余り無かったものだ。
3年経った今ではようやく落ち着いてきて、先日のようにバスター家への訪問治療を行うことも出来るようになったのだ。
(まあ、バスター様の家には結局のところ私《わたくし》が行かなくても大丈夫だったのですが・・・)
「聖女様?」
「えっ?ああ、すみません。少し考え事をしておりました」
メイドの言葉に現実に戻る聖女。
「謝らないでください。むしろ、お考えを遮ってしまい大変申し訳ございません」
恐縮しながら深く頭を下げるメイド。
「いえいえ、お気になさらないでください」
聖女はメイドの様子に慌ててそう口にする。
「ありがとうございます。ところで、聖女様。たまには気分転換等をしてはいかがでしょうか?」
メイドが礼を言いながらそう切り出す。
「え?気分転換ですか?」
意外なメイドの言葉に驚く聖女。
「はい。聖女様は今日という日までお休みも無く働いていらっしゃいました。たまにはゆっくりとお休みになられてもよろしいかと」
「・・・そうは言っても、治療している時が一番気分転換になっているのですが・・・」
聖女が困ったようにそう答える。
正直、もともと村人だった聖女は貴族としての行動よりも治療している時の方が断然リラックスができるのだ。
それに、その他に気分転換になるようなことは思いつかなかった。
「いけません!そんな事ではいけませんよ!!」
聖女の言葉にメイドが勢いよく否定する。
「せっかくの若い時を治療だけに充てては勿体無いです!もちろん治療してくださる聖女様に感謝しかありませんがもっと人生を楽しんでいただかないと!!」
「そ、そうでしょうか?」
メイドの勢いにおされる聖女。
「はい!」
「そうは言いましてもやりたいことが思い浮かびませんのですが・・・」
聖女が困ったように答える。
すると、メイドはにっこりと笑みを浮かべ、
「では、こちらではいかがでしょうか?」
どこからか紙を一枚取り出し、聖女に手渡す。
「何ですか?・・・【魔法武闘会】?」
聖女が紙に書いてある題名を読む。
「はい!【魔法武闘会】です。魔法学園で毎年開催されております!!」
「え、えーっと、別に戦闘には興味無いのですが・・・」
メイドの圧力に少し下がり気味で聖女が返すと、メイドはニヤリと笑い、
「実は、この魔法学園というのは聖女様と同年代の貴族の美男が集まる場所でもあるのです!」
「・・・えっと、だからどうしたのでしょうか?」
メイドが何故ここでドヤ顔をしているか本気で分からない聖女。
「もちろんっ!聖女様の生涯の伴侶となられる方を探しに行くのです!!」
聖女の様子にも動じた様子も無く、メイドははっきりと告げたのだった。
今日もやってくる病人や怪我人の治療を終え、誰にも気づかれぬよう深い息を吐く美少女。
「聖女様、本日も本当にお疲れ様です」
近くに待機していたメイドがその美少女・・・聖女に声をかける。
「ありがとうございます。3年前に比べると大分楽になりましたのでそこまでではありませんよ」
聖女がメイドに笑いながら返す。
聖女という3大貴族と同等の人物ではあるか元々が村人だったこともあり、メイド相手であろうと丁寧な対応をする。
それが万人に慕われる理由の1つだろう。
もう何度目か分からないがそんな事を考えながらメイドは話を続ける。
「仰る通りですね。3年前は本当に大変でした」
当時は一代前の聖女が亡くなってからの期間が空いていたことから聖女でないと治せない病気や怪我を患った人々が沢山いた。
さらに聖女に成り立てで勝手が分からなかったこともあり毎日が火の車であった。
それこそ朝から晩までの治療、そして貴族となったことに対する様々な学ぶことがあり、眠る時間も余り無かったものだ。
3年経った今ではようやく落ち着いてきて、先日のようにバスター家への訪問治療を行うことも出来るようになったのだ。
(まあ、バスター様の家には結局のところ私《わたくし》が行かなくても大丈夫だったのですが・・・)
「聖女様?」
「えっ?ああ、すみません。少し考え事をしておりました」
メイドの言葉に現実に戻る聖女。
「謝らないでください。むしろ、お考えを遮ってしまい大変申し訳ございません」
恐縮しながら深く頭を下げるメイド。
「いえいえ、お気になさらないでください」
聖女はメイドの様子に慌ててそう口にする。
「ありがとうございます。ところで、聖女様。たまには気分転換等をしてはいかがでしょうか?」
メイドが礼を言いながらそう切り出す。
「え?気分転換ですか?」
意外なメイドの言葉に驚く聖女。
「はい。聖女様は今日という日までお休みも無く働いていらっしゃいました。たまにはゆっくりとお休みになられてもよろしいかと」
「・・・そうは言っても、治療している時が一番気分転換になっているのですが・・・」
聖女が困ったようにそう答える。
正直、もともと村人だった聖女は貴族としての行動よりも治療している時の方が断然リラックスができるのだ。
それに、その他に気分転換になるようなことは思いつかなかった。
「いけません!そんな事ではいけませんよ!!」
聖女の言葉にメイドが勢いよく否定する。
「せっかくの若い時を治療だけに充てては勿体無いです!もちろん治療してくださる聖女様に感謝しかありませんがもっと人生を楽しんでいただかないと!!」
「そ、そうでしょうか?」
メイドの勢いにおされる聖女。
「はい!」
「そうは言いましてもやりたいことが思い浮かびませんのですが・・・」
聖女が困ったように答える。
すると、メイドはにっこりと笑みを浮かべ、
「では、こちらではいかがでしょうか?」
どこからか紙を一枚取り出し、聖女に手渡す。
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「はい!【魔法武闘会】です。魔法学園で毎年開催されております!!」
「え、えーっと、別に戦闘には興味無いのですが・・・」
メイドの圧力に少し下がり気味で聖女が返すと、メイドはニヤリと笑い、
「実は、この魔法学園というのは聖女様と同年代の貴族の美男が集まる場所でもあるのです!」
「・・・えっと、だからどうしたのでしょうか?」
メイドが何故ここでドヤ顔をしているか本気で分からない聖女。
「もちろんっ!聖女様の生涯の伴侶となられる方を探しに行くのです!!」
聖女の様子にも動じた様子も無く、メイドははっきりと告げたのだった。
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