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第258話
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ウォォォォォ!
体長4mはある魔物が雄叫びを上げる。
ビッグベア・・・体中を剛毛で覆われた獣の魔物が両前足を高く上げる様は見る者に恐怖を与える。
対峙するは一人の人間である。
その男はボロボロの黒の外套を羽織り、短く真っ白な髪の40歳くらいの男である。
「・・・ふん。威嚇など無意味だ。さっさと掛かってこい」
ビッグベアの威嚇など全く気にしないばかりか挑発するように掛かってこいというジェスチャーをする。
ガァァァァァ!!
魔物にもその男の自分に対する態度が伝わったのか高く上げた前足の一つを振り下ろしてくる。
しかし、確実に仕留めたと思い口角を上げながら前足を振り下ろしたビッグベアの表情が困惑へと変わる。
ガ・・・ガァ
驚いた事に自分の胴体ほどある太さのビッグベアの前足を白髪の男は片手で受け止めたのだ。
「どうした?・・・お前の力はそんなものか?」
白髪の男は未だ力を加えてくるビッグベアの攻撃など意に介した様子もなく、淡々と尋ねる。
グゥゥゥゥ・・・ガァァァァァ!!
困惑から抜け出したビックベアがもう一つの前足を白髪の男に向けて振り下ろす。
ドォォォォン
白髪の男の居た場所の地面が弾けるように吹き飛ぶ。
ウォォォォォォ!!!
勝利を確信したビッグベアが嬉しそうに叫ぶ。
「・・・もういい。貴様は眠るがいい」
!?
いつの間にか目の前にいた白髪の男の存在にやっと気が付いたビッグベアは慌てて前足を横薙ぎに振るい始める。
「遅い・・・じゃあな」
トン
白髪の男はまるで扉をノックするようにビックベアの胸板を小突く。
次の瞬間
ドンッ!
ビックベアの体に穴が開き、直ぐにこと切れた。
「ちっ・・・もうこの外套も捨て時だな・・・」
自分が倒したビックベアには興味を失った男が返り血で汚れた外套をその場に脱ぎ捨てる。
「・・・おい。こそこそと何をしている?俺に何か用か?」
白髪の男は誰も居ない場所に目を向け、急に喋り出した。
今は森の中、白髪の男が見ているところにはただ木々があるのみのはず、
「へぇ。どうして分かったのかな?僕の隠密は完璧なはずだけど」
何もなかった場所の景色が歪み始めるとやがて一人の男が現れる。
今までどうやって隠れていたのか不思議なくらい目立つ格好をした者であった。
全身を真っ赤なスーツで身を包み、帽子まで赤い。
町でこんな人間を見かけたら、まず目に留まる。
そんな奇妙な人間が白髪の男に対し、楽しそうに話しかけて来る。
「完璧だと?そんな興味たっぷりの目でじろじろ見られたらいやでも気づく」
白髪の男は淡々と返事をする。
「ふーん。そんなにじろじろは見てないはずだけどねぇ」
赤ずくめの男はケラケラと笑う。
だが、その余裕な表情は白髪の男の次の言葉ですぐに崩された。
「・・・で、【魔族】が何の用だ?」
「!?・・・何故分かった?」
先ほどとは違い真剣な表情をする赤ずくめが白髪の男に問いかける。
「ふん。お前たちは匂うんだよ。性根の腐った臭いがプンプンとするぜ。俺も汚いことは平気でするがお前たちには負ける」
白髪の男が心底嫌そうに肩を竦める。
赤ずくめは白髪の男の言っていることは嘘だと思った。
匂いなんかで魔族かどうかなど分かるはずがない。
(まぁ、いいか。素直に答える気は無いようだしね)
「それで、何の用だ?見ての通り、こんな山奥にいる俺のような人間に【魔族】がわざわざ来る理由は正直思い付かんが」
白髪の男が早く帰れとばかりに質問を浴びせる。
だが、赤ずくめの次の言葉を聞いて表情が一変する。
「【グレイ・ズー】」
「っ!?」
その名前を聞いた瞬間、先ほどまでの余裕の表情が白髪の男から消え去る。
「ふふ。ようやく人間らしい表情になったね・・・【マドッグ・ゾイド】」
赤ずくめが嬉しそうに口角を上げる。
「・・・何故、その名前をお前が言う?」
憎悪の表情で白髪の男・・・マドッグが赤ずくめに尋ねた。
体長4mはある魔物が雄叫びを上げる。
ビッグベア・・・体中を剛毛で覆われた獣の魔物が両前足を高く上げる様は見る者に恐怖を与える。
対峙するは一人の人間である。
その男はボロボロの黒の外套を羽織り、短く真っ白な髪の40歳くらいの男である。
「・・・ふん。威嚇など無意味だ。さっさと掛かってこい」
ビッグベアの威嚇など全く気にしないばかりか挑発するように掛かってこいというジェスチャーをする。
ガァァァァァ!!
魔物にもその男の自分に対する態度が伝わったのか高く上げた前足の一つを振り下ろしてくる。
しかし、確実に仕留めたと思い口角を上げながら前足を振り下ろしたビッグベアの表情が困惑へと変わる。
ガ・・・ガァ
驚いた事に自分の胴体ほどある太さのビッグベアの前足を白髪の男は片手で受け止めたのだ。
「どうした?・・・お前の力はそんなものか?」
白髪の男は未だ力を加えてくるビッグベアの攻撃など意に介した様子もなく、淡々と尋ねる。
グゥゥゥゥ・・・ガァァァァァ!!
困惑から抜け出したビックベアがもう一つの前足を白髪の男に向けて振り下ろす。
ドォォォォン
白髪の男の居た場所の地面が弾けるように吹き飛ぶ。
ウォォォォォォ!!!
勝利を確信したビッグベアが嬉しそうに叫ぶ。
「・・・もういい。貴様は眠るがいい」
!?
いつの間にか目の前にいた白髪の男の存在にやっと気が付いたビッグベアは慌てて前足を横薙ぎに振るい始める。
「遅い・・・じゃあな」
トン
白髪の男はまるで扉をノックするようにビックベアの胸板を小突く。
次の瞬間
ドンッ!
ビックベアの体に穴が開き、直ぐにこと切れた。
「ちっ・・・もうこの外套も捨て時だな・・・」
自分が倒したビックベアには興味を失った男が返り血で汚れた外套をその場に脱ぎ捨てる。
「・・・おい。こそこそと何をしている?俺に何か用か?」
白髪の男は誰も居ない場所に目を向け、急に喋り出した。
今は森の中、白髪の男が見ているところにはただ木々があるのみのはず、
「へぇ。どうして分かったのかな?僕の隠密は完璧なはずだけど」
何もなかった場所の景色が歪み始めるとやがて一人の男が現れる。
今までどうやって隠れていたのか不思議なくらい目立つ格好をした者であった。
全身を真っ赤なスーツで身を包み、帽子まで赤い。
町でこんな人間を見かけたら、まず目に留まる。
そんな奇妙な人間が白髪の男に対し、楽しそうに話しかけて来る。
「完璧だと?そんな興味たっぷりの目でじろじろ見られたらいやでも気づく」
白髪の男は淡々と返事をする。
「ふーん。そんなにじろじろは見てないはずだけどねぇ」
赤ずくめの男はケラケラと笑う。
だが、その余裕な表情は白髪の男の次の言葉ですぐに崩された。
「・・・で、【魔族】が何の用だ?」
「!?・・・何故分かった?」
先ほどとは違い真剣な表情をする赤ずくめが白髪の男に問いかける。
「ふん。お前たちは匂うんだよ。性根の腐った臭いがプンプンとするぜ。俺も汚いことは平気でするがお前たちには負ける」
白髪の男が心底嫌そうに肩を竦める。
赤ずくめは白髪の男の言っていることは嘘だと思った。
匂いなんかで魔族かどうかなど分かるはずがない。
(まぁ、いいか。素直に答える気は無いようだしね)
「それで、何の用だ?見ての通り、こんな山奥にいる俺のような人間に【魔族】がわざわざ来る理由は正直思い付かんが」
白髪の男が早く帰れとばかりに質問を浴びせる。
だが、赤ずくめの次の言葉を聞いて表情が一変する。
「【グレイ・ズー】」
「っ!?」
その名前を聞いた瞬間、先ほどまでの余裕の表情が白髪の男から消え去る。
「ふふ。ようやく人間らしい表情になったね・・・【マドッグ・ゾイド】」
赤ずくめが嬉しそうに口角を上げる。
「・・・何故、その名前をお前が言う?」
憎悪の表情で白髪の男・・・マドッグが赤ずくめに尋ねた。
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