他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに

第250話

「よし！今日からまた頑張るか！」

国王との謁見の予定という平民のグレイにはとんでもない話をされた翌々日の月曜日。

今から緊張しても仕方がないと無理やり割り切ることにしたグレイはブルーマンデーなんて言っていられぬとばかりに自らを鼓舞するように気合をいれる。

『月曜日からテンション高いのぉ』

グレイから事情を聞いていたイズはグレイの心情を理解していながらも軽い言い合いをするために声を掛ける。

「ははは、もしかしたら国王様の関係者の方も【魔法武闘会】に来るかもしれないだろ？負けるのは仕方がないとしても気概だけは見せないとね。俺の評価なんてどうでもいいけど、それ位はしておかないと付き人として傍に置いてくれているアリシアやゾルム様の顔に泥をしまうかもしれないからさ」

『なるほどのぉ』

（やれやれ、グレイは相変わらず他の人のためなのだな。まあ、グレイらしくていいが・・・）

イズはグレイの言葉に内心で嬉しそうに呟く。

コンコンコン

そんな時、部屋のドアがノックされた。

「？・・・イズ」

グレイは朝から訪ねてくるのは誰だ？と思いながらもイズにそっと声を掛ける。

『ああ』

イズは心得たとばかりに姿を消すとグレイの左肩に止まる。

グレイはイズが姿を消したことを確認するやいなや入口に向かって歩いて行く。

念の為、扉ののぞき穴から訪問者を確認すると、

「！？」

ガチャ

相手が誰か分かったグレイが急いで扉を開ける。

そこには金髪碧眼の美男子が立っていた。

「エル！」

思わずグレイが嬉しそうに相手の名前を呼ぶ。

「グレイ！」

対するエル・・・エルリック・バスターもグレイの名を呼ぶと近寄ってきてグレイの手をエルが両手を包むようにして握る。

「ありがとう。本当にありがとう」

エルはグレイに対してただただ感謝の言葉を告げ続ける。

グレイはエルの態度に少しだけ驚くと、すぐに優しい笑みを浮かべる。

「・・・俺は大したことしてないよ。それよりもユーマリアさんは大丈夫そう？」

「うん。あれからもうすっかり良くなったよ。今まで満足に動けなかった分を取り戻すかのように物凄く行動的になって執事やメイド達が笑顔を浮かべながら困っているんだ」

エルが妹のユーマリアの様子を分かりやすく説明する。

「あはは、そうか笑顔を浮かべながら困っているか。それは良かった！」

グレイはエルの表現がツボに入ったようで楽しそうに復唱した後、喜びの声を上げる。

「うん。これもすべてグレイとアリシアさんのお陰だよ。本当にありがとう」

「いやいや、エルが感謝をするのは俺じゃなくてアリシアだけでいいから気にしないでいいよ」

グレイの言葉でまだお礼を言い足りないエルだったが渋々と握っていた手を離す。

「じゃ、行こうぜ。いつものようにアリシアと合流してからになるけど大丈夫か？」

グレイはエルが手を離したのを確認するとエルに確認を取る。

「うん。もちろん良いよ。アリシアさんにもお礼を言いたいし」

エルの言葉を聞いてグレイは扉の外へ出て鍵を掛ける。

そのグレイの姿を見ながらエルが、

「・・・というか、グレイ。いつの間にアリシアさんを呼び捨てる位仲良くなったの？」

至極真っ当な突っ込みを入れた。

「・・・あっ・・・」

グレイの思わず呟いた声が静かな廊下に響いたのであった。