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第241話

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「・・・そう。教えてくれてありがとう」

マーガレットは一瞬アリシアを見てからグレイに礼を言うと、教室の出口に向かって歩いて行く。

黙って見送っていると、マーガレットが出口の一歩前で立ち止まる。

「・・・一応言っておくけど、全部断っているからね・・・」

小さな声で、呟くように言ったマーガレットは足早に教室を出ていった。

「・・・」

グレイはどんな反応をしていいか分からず呆然とするがそれはアリシアからの声かけですぐに我に返った。

「グレイ?」

「っ!?」

ギギギギ

グレイは背筋が凍るかと思うほど冷たいアリシアの言葉を聞き、まるで自分が人形になったかのように上手く動かせない体を無理やりアリシアの方へ向ける。

「ア、アリシア様?」

そこには顔は笑顔だが目が笑っていないアリシアがいた。

「ど、どうかされましたか?」

何故だろう汗が止まらない。

「いいえ、別に何でもありませんわ」

「とてもそうは見えませんが・・・」

「・・・何でもありませんと言いましたわよね?」

「!?はい!!」

アリシアの有無を言わせぬプレッシャーにただただ返事をするグレイ。

(・・・何だ?これ、絶対に怒っているよな)

グレイはアリシアがどうして不機嫌になったのか分からない上、どうしたら良いかも分からない。

途方に暮れていると思わぬ所から助け船が出された。

「アリシア、グレイ、そろそろ帰ろ?」

それは2人を待っていたセリーであった。

「・・・ええ、そうしましょう。グレイ、行きますわよ」

「は、はい!」

アリシアの態度が軟化したことをこれ幸いとグレイは素直にアリシアとセリーの後を付いていく。

セリーはアリシアと一歩遅れて歩き出すと、ちらりとグレイの方を向き、

「グレイ、これは貸し」

と小声で言った後、にっと笑う。

「・・・ああ。助かった」

グレイは腑に落ちないとは思いながらも助かったのは確かだったので小声で返事をしながら頷く。



「ふぅ。疲れたな・・・」

アリシアとセリーと別れた後、グレイはアリシアの肩からこっそりと戻ってきたイズと共に寮に帰って来ていた。

ぽすん

何もする気が起きないグレイは真っ直ぐに寝室に向かうとうつぶせのままベッドに倒れ込む。

『・・・お疲れ。見事だったぞ』

イズが姿消しを解除しグレイの背中に向けて労いの言葉を掛ける。

グレイは辛そうに寝返りをうつと仰向けになりイズを見る。

「ありがとう」

『・・・早く体を治せ』

イズは照れ隠しのためか明後日の方を向くとグレイに傷を治すように進言する。

「ああ、そうか・・・そうだな」

グレイは体のだるさの原因の一つが怪我だとようやく気づくと、右鎖骨下に穴のあいた上半身の服をゆっくりと脱いでいく。

苦労しながら脱いだ後に、穴があいた服はもう着れないしハサミで服を切れば良かったと後悔したが既に脱いでしまったので気にしないようにする。

保健室で処置をして貰った包帯などを今度はハサミを使って取っていく。

「イズ、どんな感じだ?」

傷が見える段階になったころ、位置的にグレイには見えないため傷についてイズに尋ねるとイズはすぐにグレイの胸元までやってくる。

『・・・酷いな。見えない位置で良かったと思うぞ』

イズは器用に顔をしかめると正直な感想をグレイに告げる。

「あー、やっぱり?保健室に言った時にアリシアも凄く心配していたしな」

グレイはマーガレットとの戦いの後、アリシア、ユイ、マーガレットと共に保健室に向かった。

ユイは気絶したマーガレットを持ち上げ、アリシアはグレイの付き添いとして。

ユイがアリシアも保健室に同行を許したのはグレイの後の試合があと1試合で時間に余裕があったこととアリシアがグレイの事を心配しているのを理解していたからだろう。

手当のために傷を見せた時のアリシアの心配そうな顔は印象に残っている。

ちなみにユイは「ほう」といって感心していた。

おそらくマーガレットの魔法の威力を想像したからだろう。
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