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第217話

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更には軍事利用。

もし戦争を仕掛けた相手に【転送】魔法陣を使いこなせるものがいれば、他国に侵入させ守りの手薄なところへ魔法陣をかけばあっという間に攻め滅ぼす事ができるだろう。

「・・・ヤバいね」

グレイが冷や汗をかく。

「はい・・・」

アリシアはグレイの言葉に同意した後、

「現存する【転送】魔法陣に関しての研究は続いておりますが未だに実用化の目処が立ってないと聞いております。もっとも、それが本当のことかは分かりませんが少なくとも表立って【転送】魔法陣を使って何かをしている様子はないですわ」

現状を説明する。

『それはそうだろうな』

ここでイズが話に加わった。

「イズさん、何かご存知なのですか?」

アリシアがイズを見ながら尋ねる。

つられてグレイもイズに注目をする。

『ああ。現代に残っているという【転送】魔法陣というのは【永久設置型】なのだろう』

イズが聞き慣れない言葉を呟く。

「【永久設置型】ですか?」

『ああ。そうだ。現代にどのくらい残っているかは知らないが魔力さえ使用すれば使うことの出来るものを【永久設置型】という。文字通り書き写そうが地面から運ぼうがその場所から動かすと効果が無くなるのだ』

「理解いたしましたわ。だから、その魔法陣を研究しても【転送】魔法陣を使うことができないのですね」

アリシアが納得したように頷く。

『そう言う事だろう。【永久設置型】は使用する場所の材質から何まで様々なファクターを組み合わせて初めて効果を発揮するものだからな。一方、今グレイが出したものは【永久設置型】とは異なり、【簡易設置型】だ』

「【簡易設置型】?何だが、あんまり大したものじゃ無さそうだな」

イズの説明に今度はグレイが尋ねる。

イズはその言葉に笑みを浮かべると、

『ふっ。名前だけは安っぽいが実際は違う。【簡易設置型】は魔法陣を描く人物を揃え、なおかつその人物しか発動しない。さらには魔力だけでなく魔法陣を発動させるための呪文を唱えなければならないという制約があるもののその効果は【永久設置型】と同じものだ』

「・・・ホントだ。名前だけだな」

グレイは少し呆れたように呟く。

はるか昔の先祖たちは何というネーミングセンスなのだと。

(・・・きっと、誰でも使えるから魔法陣単独の効果ではなく、汎用性が重視された時代だったんだろうな)

グレイは仮説を立て、一人納得する。

「・・・ということは、この魔法陣を発動させる呪文さえ分かれば【転送】魔法陣を使うことが出来るということでしょうか?」

アリシアは緊張しながらイズに尋ねる。

『その通りだ』

イズははっきりと肯定する。

「そう・・・ですか・・・」

アリシアが若干震えながら呟く。

「アリシア?」

その様子を見ていたグレイがアリシアに向かって名前を呼ぶ。

アリシアはグレイの方にぱっと向くと、

「グレイ!あなたはまたとんでもないことをしてくださいましたわ!【迷宮の主】であるイズさんをお連れしただけでなく、亜空間に格納・展開可能な【腕輪】、さらには万能薬である【エリクサー】。他にも沢山ありますがここへ来て【転送】魔法陣とは・・・」

興奮したように話し出す。

「えーっと、アリシア?」

普段と違うアリシアの様子にグレイは戸惑いながらもアリシアの名前を呼ぶと興奮し過ぎたことを自覚したアリシアが様子を変えて、

「あ、私《わたくし》としたことが興奮し過ぎてしまいました。申し訳ございませんわ・・・。以前から【転送】魔法陣には興味がありましたので凄く反応してしまいました」

早口で言い訳をする。

「へぇ、そうなんだ。ということはこの魔法陣を発動させるための呪文について・・・」

「もちろん御協力させて頂きますわ!」

グレイが言い終わるよりも早くアリシアが返事をする。

「良かった。ありがとう」

グレイが少し笑いながら礼を言う。

(今日はアリシアの意外な面を見れた気がする)

アリシアはグレイの笑みの意味を理解し、照れた様子で、

「そもそも最初からグレイのお願い自体をお受けしてましたしそのようにほっとされるのはちょっと心外ですわ」

(何だこれ、可愛すぎる・・・)

アリシアの様子に少し見惚れながらもグレイは続ける。

「ははは、そうだったね。ありがとう・・・でも、今度からは内容を聞いてから返事をしてね」

(そうでないと自分が増長して横暴なことをアリシアに言うようになってしまうかもしれない)

「グレイは調子に乗ったりしないとは思いますが、畏まりましたわ」

グレイの心配事を的確に理解したアリシアが頷いた。
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