218 / 369
第217話
しおりを挟む
更には軍事利用。
もし戦争を仕掛けた相手に【転送】魔法陣を使いこなせるものがいれば、他国に侵入させ守りの手薄なところへ魔法陣をかけばあっという間に攻め滅ぼす事ができるだろう。
「・・・ヤバいね」
グレイが冷や汗をかく。
「はい・・・」
アリシアはグレイの言葉に同意した後、
「現存する【転送】魔法陣に関しての研究は続いておりますが未だに実用化の目処が立ってないと聞いております。もっとも、それが本当のことかは分かりませんが少なくとも表立って【転送】魔法陣を使って何かをしている様子はないですわ」
現状を説明する。
『それはそうだろうな』
ここでイズが話に加わった。
「イズさん、何かご存知なのですか?」
アリシアがイズを見ながら尋ねる。
つられてグレイもイズに注目をする。
『ああ。現代に残っているという【転送】魔法陣というのは【永久設置型】なのだろう』
イズが聞き慣れない言葉を呟く。
「【永久設置型】ですか?」
『ああ。そうだ。現代にどのくらい残っているかは知らないが魔力さえ使用すれば使うことの出来るものを【永久設置型】という。文字通り書き写そうが地面から運ぼうがその場所から動かすと効果が無くなるのだ』
「理解いたしましたわ。だから、その魔法陣を研究しても【転送】魔法陣を使うことができないのですね」
アリシアが納得したように頷く。
『そう言う事だろう。【永久設置型】は使用する場所の材質から何まで様々なファクターを組み合わせて初めて効果を発揮するものだからな。一方、今グレイが出したものは【永久設置型】とは異なり、【簡易設置型】だ』
「【簡易設置型】?何だが、あんまり大したものじゃ無さそうだな」
イズの説明に今度はグレイが尋ねる。
イズはその言葉に笑みを浮かべると、
『ふっ。名前だけは安っぽいが実際は違う。【簡易設置型】は魔法陣を描く人物を揃え、なおかつその人物しか発動しない。さらには魔力だけでなく魔法陣を発動させるための呪文を唱えなければならないという制約があるもののその効果は【永久設置型】と同じものだ』
「・・・ホントだ。名前だけだな」
グレイは少し呆れたように呟く。
はるか昔の先祖たちは何というネーミングセンスなのだと。
(・・・きっと、誰でも使えるから魔法陣単独の効果ではなく、汎用性が重視された時代だったんだろうな)
グレイは仮説を立て、一人納得する。
「・・・ということは、この魔法陣を発動させる呪文さえ分かれば【転送】魔法陣を使うことが出来るということでしょうか?」
アリシアは緊張しながらイズに尋ねる。
『その通りだ』
イズははっきりと肯定する。
「そう・・・ですか・・・」
アリシアが若干震えながら呟く。
「アリシア?」
その様子を見ていたグレイがアリシアに向かって名前を呼ぶ。
アリシアはグレイの方にぱっと向くと、
「グレイ!あなたはまたとんでもないことをしてくださいましたわ!【迷宮の主】であるイズさんをお連れしただけでなく、亜空間に格納・展開可能な【腕輪】、さらには万能薬である【エリクサー】。他にも沢山ありますがここへ来て【転送】魔法陣とは・・・」
興奮したように話し出す。
「えーっと、アリシア?」
普段と違うアリシアの様子にグレイは戸惑いながらもアリシアの名前を呼ぶと興奮し過ぎたことを自覚したアリシアが様子を変えて、
「あ、私《わたくし》としたことが興奮し過ぎてしまいました。申し訳ございませんわ・・・。以前から【転送】魔法陣には興味がありましたので凄く反応してしまいました」
早口で言い訳をする。
「へぇ、そうなんだ。ということはこの魔法陣を発動させるための呪文について・・・」
「もちろん御協力させて頂きますわ!」
グレイが言い終わるよりも早くアリシアが返事をする。
「良かった。ありがとう」
グレイが少し笑いながら礼を言う。
(今日はアリシアの意外な面を見れた気がする)
アリシアはグレイの笑みの意味を理解し、照れた様子で、
「そもそも最初からグレイのお願い自体をお受けしてましたしそのようにほっとされるのはちょっと心外ですわ」
(何だこれ、可愛すぎる・・・)
アリシアの様子に少し見惚れながらもグレイは続ける。
「ははは、そうだったね。ありがとう・・・でも、今度からは内容を聞いてから返事をしてね」
(そうでないと自分が増長して横暴なことをアリシアに言うようになってしまうかもしれない)
「グレイは調子に乗ったりしないとは思いますが、畏まりましたわ」
グレイの心配事を的確に理解したアリシアが頷いた。
もし戦争を仕掛けた相手に【転送】魔法陣を使いこなせるものがいれば、他国に侵入させ守りの手薄なところへ魔法陣をかけばあっという間に攻め滅ぼす事ができるだろう。
「・・・ヤバいね」
グレイが冷や汗をかく。
「はい・・・」
アリシアはグレイの言葉に同意した後、
「現存する【転送】魔法陣に関しての研究は続いておりますが未だに実用化の目処が立ってないと聞いております。もっとも、それが本当のことかは分かりませんが少なくとも表立って【転送】魔法陣を使って何かをしている様子はないですわ」
現状を説明する。
『それはそうだろうな』
ここでイズが話に加わった。
「イズさん、何かご存知なのですか?」
アリシアがイズを見ながら尋ねる。
つられてグレイもイズに注目をする。
『ああ。現代に残っているという【転送】魔法陣というのは【永久設置型】なのだろう』
イズが聞き慣れない言葉を呟く。
「【永久設置型】ですか?」
『ああ。そうだ。現代にどのくらい残っているかは知らないが魔力さえ使用すれば使うことの出来るものを【永久設置型】という。文字通り書き写そうが地面から運ぼうがその場所から動かすと効果が無くなるのだ』
「理解いたしましたわ。だから、その魔法陣を研究しても【転送】魔法陣を使うことができないのですね」
アリシアが納得したように頷く。
『そう言う事だろう。【永久設置型】は使用する場所の材質から何まで様々なファクターを組み合わせて初めて効果を発揮するものだからな。一方、今グレイが出したものは【永久設置型】とは異なり、【簡易設置型】だ』
「【簡易設置型】?何だが、あんまり大したものじゃ無さそうだな」
イズの説明に今度はグレイが尋ねる。
イズはその言葉に笑みを浮かべると、
『ふっ。名前だけは安っぽいが実際は違う。【簡易設置型】は魔法陣を描く人物を揃え、なおかつその人物しか発動しない。さらには魔力だけでなく魔法陣を発動させるための呪文を唱えなければならないという制約があるもののその効果は【永久設置型】と同じものだ』
「・・・ホントだ。名前だけだな」
グレイは少し呆れたように呟く。
はるか昔の先祖たちは何というネーミングセンスなのだと。
(・・・きっと、誰でも使えるから魔法陣単独の効果ではなく、汎用性が重視された時代だったんだろうな)
グレイは仮説を立て、一人納得する。
「・・・ということは、この魔法陣を発動させる呪文さえ分かれば【転送】魔法陣を使うことが出来るということでしょうか?」
アリシアは緊張しながらイズに尋ねる。
『その通りだ』
イズははっきりと肯定する。
「そう・・・ですか・・・」
アリシアが若干震えながら呟く。
「アリシア?」
その様子を見ていたグレイがアリシアに向かって名前を呼ぶ。
アリシアはグレイの方にぱっと向くと、
「グレイ!あなたはまたとんでもないことをしてくださいましたわ!【迷宮の主】であるイズさんをお連れしただけでなく、亜空間に格納・展開可能な【腕輪】、さらには万能薬である【エリクサー】。他にも沢山ありますがここへ来て【転送】魔法陣とは・・・」
興奮したように話し出す。
「えーっと、アリシア?」
普段と違うアリシアの様子にグレイは戸惑いながらもアリシアの名前を呼ぶと興奮し過ぎたことを自覚したアリシアが様子を変えて、
「あ、私《わたくし》としたことが興奮し過ぎてしまいました。申し訳ございませんわ・・・。以前から【転送】魔法陣には興味がありましたので凄く反応してしまいました」
早口で言い訳をする。
「へぇ、そうなんだ。ということはこの魔法陣を発動させるための呪文について・・・」
「もちろん御協力させて頂きますわ!」
グレイが言い終わるよりも早くアリシアが返事をする。
「良かった。ありがとう」
グレイが少し笑いながら礼を言う。
(今日はアリシアの意外な面を見れた気がする)
アリシアはグレイの笑みの意味を理解し、照れた様子で、
「そもそも最初からグレイのお願い自体をお受けしてましたしそのようにほっとされるのはちょっと心外ですわ」
(何だこれ、可愛すぎる・・・)
アリシアの様子に少し見惚れながらもグレイは続ける。
「ははは、そうだったね。ありがとう・・・でも、今度からは内容を聞いてから返事をしてね」
(そうでないと自分が増長して横暴なことをアリシアに言うようになってしまうかもしれない)
「グレイは調子に乗ったりしないとは思いますが、畏まりましたわ」
グレイの心配事を的確に理解したアリシアが頷いた。
137
お気に入りに追加
1,441
あなたにおすすめの小説
平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。
学園長からのお話です
ラララキヲ
ファンタジー
学園長の声が学園に響く。
『昨日、平民の女生徒の食べていたお菓子を高位貴族の令息5人が取り囲んで奪うという事がありました』
昨日ピンク髪の女生徒からクッキーを貰った自覚のある王太子とその側近4人は項垂れながらその声を聴いていた。
学園長の話はまだまだ続く……
◇テンプレ乙女ゲームになりそうな登場人物(しかし出てこない)
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
いらないスキル買い取ります!スキル「買取」で異世界最強!
町島航太
ファンタジー
ひょんな事から異世界に召喚された木村哲郎は、救世主として期待されたが、手に入れたスキルはまさかの「買取」。
ハズレと看做され、城を追い出された哲郎だったが、スキル「買取」は他人のスキルを買い取れるという優れ物であった。
異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?
夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。
気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。
落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。
彼らはこの世界の神。
キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。
ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。
「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?
mio
ファンタジー
特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。
神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。
そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。
日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。
神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?
他サイトでも投稿しております。
伯爵家の次男に転生しましたが、10歳で当主になってしまいました
竹桜
ファンタジー
自動運転の試験車両に轢かれて、死んでしまった主人公は異世界のランガン伯爵家の次男に転生した。
転生後の生活は順調そのものだった。
だが、プライドだけ高い兄が愚かな行為をしてしまった。
その結果、主人公の両親は当主の座を追われ、主人公が10歳で当主になってしまった。
これは10歳で当主になってしまった者の物語だ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる