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第202話
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「ありがとうございます。いつもすみません」
もう何度も食事をご馳走になっていて申し訳なく思っているグレイがゾルムの昼食の誘いに礼を言うと同時に謝る。
ゾルムは首を振りながら、
「いいさ。グレイ君ならいつでも歓迎だ。食事も宿泊も遠慮はいらない。自分の家と思って寛いでくれて構わない」
何ともありがたいことを言ってくれる。
「ありがとうございます」
グレイはそこまで言って貰えることに感動しながら頭を下げる。
グレイが顔を上げるとゾルムは優しい顔でグレイの様子を見ていた。
が、すぐに何やら意地の悪そうな顔になり、
「・・・だが、アリシアを妻に欲しいという時にはしっかりと見定めさせて貰うからそのことだけは肝に銘じておくように」
「お父様っ!!」
ゾルムの思わぬ言葉に普段冷静なアリシアが大きな声を出す。
グレイがちらりと見るとアリシアの顔が真っ赤であるのが直ぐに分かった。
「はい。肝に銘じます」
グレイはゾルムの言葉を真っ向から受け止め返事をする。
「ちょっと、グレイまで!!」
アリシアはグレイの思わぬ言葉にも動揺を隠せない。
「ふっ」
その様子を見ていたゾルムが思わず笑い声を漏らし、
「はぁーはっはっ!グレイ君も言うようになったなっ!」
やがて耐えられなくなり大きな声で笑う。
「ありがとうございます」
グレイはグレイで笑みを浮かべながら礼を言った。
「もうっ!二人ともっ!!」
アリシアはそのやり取りを見てそっぽを向く。
(アリシアは本当にグレイ君といると楽しそうな顔をするようになったな)
ゾルムはそんな様子のアリシアを見て微笑む。
(グレイ君が居なくなった1月ちょっとの間は辛そうで見ていられなかった。グレイ君が生きていて本当に良かった)
ゾルムは少し前の事を思い出しながら心の底から安堵する。
そして、未だ拗ねているアリシアに向かい、
「そうだ。アリシア。グレイ君を部屋に案内して上げてくれるか?それとアリシアも荷物を自分の部屋に置きたいだろう。その後に食堂まで来てくれれば昼食としよう」
「・・・分かりましたわ」
アリシアは直ぐに切り替え、ゾルムに返事をすると、
「グレイ。参りましょうか」
グレイに声を掛ける。
「畏まりました。ゾルム様、それでは一度、失礼致します」
「ああ。昼食の後もまだ話があるから付き合ってくれると助かる」
「もちろんです」
グレイはゾルムのお願いを快諾するとアリシアに付いて部屋を出て行った。
「ふっ。グレイ君がアリシアを妻にか」
ゾルムはつい冗談交じりに言った言葉を思い出す。
「ただの思い付きだったが、アリシアも満更ではない様子だったしありかも知れんな・・・まぁ、そのためにはグレイ君が私たちと対等とまでは行かなくとも近くまで来てもらわないといけないが・・・」
とここまで呟いたゾルムが先日のアリシアの言葉を思い出す。
「ふふふ・・・そうか、だからアリシアはグレイ君への御礼についてあんなことを言ったのか・・・」
と、その時、部屋の扉がノックされて執事のムスターが部屋に入ってくる。
「失礼致します。旦那様、とても嬉しそうでいらっしゃいますね。何か良いことでもございましたか?」
ムスターはゾルムがとても嬉しそうに笑っているのを見て思わず尋ねる。
「ん?ああ、ムスターか。いやなに、今のところは何でもない話だよ。それよりも昼食の準備は整っているかな?」
ゾルムはムスターに曖昧に答えると別の事を尋ねる。
「はい。先ほど、準備が整いました」
「御苦労。では妻たちも呼んで来てくれるか?久しぶりの『家族』全員での食事といこう」
「畏まりました」
ムスターはゾルムの『家族』という言い方に少しだけ違和感を覚えた。
ただ、それは悪い意味では無く、良い意味で言われたことだと察したので深く追及することはせず、黙って頷いた。
もう何度も食事をご馳走になっていて申し訳なく思っているグレイがゾルムの昼食の誘いに礼を言うと同時に謝る。
ゾルムは首を振りながら、
「いいさ。グレイ君ならいつでも歓迎だ。食事も宿泊も遠慮はいらない。自分の家と思って寛いでくれて構わない」
何ともありがたいことを言ってくれる。
「ありがとうございます」
グレイはそこまで言って貰えることに感動しながら頭を下げる。
グレイが顔を上げるとゾルムは優しい顔でグレイの様子を見ていた。
が、すぐに何やら意地の悪そうな顔になり、
「・・・だが、アリシアを妻に欲しいという時にはしっかりと見定めさせて貰うからそのことだけは肝に銘じておくように」
「お父様っ!!」
ゾルムの思わぬ言葉に普段冷静なアリシアが大きな声を出す。
グレイがちらりと見るとアリシアの顔が真っ赤であるのが直ぐに分かった。
「はい。肝に銘じます」
グレイはゾルムの言葉を真っ向から受け止め返事をする。
「ちょっと、グレイまで!!」
アリシアはグレイの思わぬ言葉にも動揺を隠せない。
「ふっ」
その様子を見ていたゾルムが思わず笑い声を漏らし、
「はぁーはっはっ!グレイ君も言うようになったなっ!」
やがて耐えられなくなり大きな声で笑う。
「ありがとうございます」
グレイはグレイで笑みを浮かべながら礼を言った。
「もうっ!二人ともっ!!」
アリシアはそのやり取りを見てそっぽを向く。
(アリシアは本当にグレイ君といると楽しそうな顔をするようになったな)
ゾルムはそんな様子のアリシアを見て微笑む。
(グレイ君が居なくなった1月ちょっとの間は辛そうで見ていられなかった。グレイ君が生きていて本当に良かった)
ゾルムは少し前の事を思い出しながら心の底から安堵する。
そして、未だ拗ねているアリシアに向かい、
「そうだ。アリシア。グレイ君を部屋に案内して上げてくれるか?それとアリシアも荷物を自分の部屋に置きたいだろう。その後に食堂まで来てくれれば昼食としよう」
「・・・分かりましたわ」
アリシアは直ぐに切り替え、ゾルムに返事をすると、
「グレイ。参りましょうか」
グレイに声を掛ける。
「畏まりました。ゾルム様、それでは一度、失礼致します」
「ああ。昼食の後もまだ話があるから付き合ってくれると助かる」
「もちろんです」
グレイはゾルムのお願いを快諾するとアリシアに付いて部屋を出て行った。
「ふっ。グレイ君がアリシアを妻にか」
ゾルムはつい冗談交じりに言った言葉を思い出す。
「ただの思い付きだったが、アリシアも満更ではない様子だったしありかも知れんな・・・まぁ、そのためにはグレイ君が私たちと対等とまでは行かなくとも近くまで来てもらわないといけないが・・・」
とここまで呟いたゾルムが先日のアリシアの言葉を思い出す。
「ふふふ・・・そうか、だからアリシアはグレイ君への御礼についてあんなことを言ったのか・・・」
と、その時、部屋の扉がノックされて執事のムスターが部屋に入ってくる。
「失礼致します。旦那様、とても嬉しそうでいらっしゃいますね。何か良いことでもございましたか?」
ムスターはゾルムがとても嬉しそうに笑っているのを見て思わず尋ねる。
「ん?ああ、ムスターか。いやなに、今のところは何でもない話だよ。それよりも昼食の準備は整っているかな?」
ゾルムはムスターに曖昧に答えると別の事を尋ねる。
「はい。先ほど、準備が整いました」
「御苦労。では妻たちも呼んで来てくれるか?久しぶりの『家族』全員での食事といこう」
「畏まりました」
ムスターはゾルムの『家族』という言い方に少しだけ違和感を覚えた。
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