上 下
195 / 369

第194話

しおりを挟む
「アリシアちゃん!」

「「お姉様!!」」

「お母様!リリィ!ソル!」

バルム家の屋敷に入ると、アリシアは名前を呼ばれる。

そして、声の方を見るとアリシアの母であるウェンディと妹のリリィと弟のソルが待っていた。

お互いを呼びながら駆け寄る4人。

程なくして抱きしめ合い、喜びを分かち合う。

「ああ、アリシアちゃん、無事で居てくれて嬉しいわ」

「「お姉様ぁ!!」」

「お母様たちもよくぞご無事で」

4人は全員が涙を流しお互いの存在を噛みしめる。

無理もない、ゾルムがナガリアとの戦いを決めた時、逆恨みしたナガリアに殺される可能性を考えて、ウェンディやリリィ、ソル、そして執事やメイド達を別荘に避難させたはずだ。

ウェンディ達はその事をゾルムに伝えられ、魔法学園から呼び出し中のアリシアにひと目会うこともできずじまいであった。

そしてアリシアもウェンディ達と2度と会えない寸前の状況に陥っていたのだ。

無事で再会できた喜びは大きいだろう。

(再会できて良かったねアリシア。・・・家族っていうものは良いものだな)

グレイは4人の様子を見てそう思うと、じっと見ているのも悪いと思い、窓際に向かって歩いて行く。

アリシアの無事を喜び合うバルム家、不治の病に侵されたユーマリアの完治を喜び合うバスター家、グレイには家族という存在は物心がついた時には居なかったため眩しく映る。

グレイは窓際に着くと、外の景色をしばらくの間眺め続けたのであった。



「グレイ。お待たせして申し訳ございませんわ」

外の景色を眺めていると落ち着いたアリシアがグレイを呼ぶ。

グレイが振り返るとバルム家の4人が並んでグレイの方を見ていた。

「とんでもないです。アリシア様、もう宜しいのですか?」

言外にいくらでも待ちますよという気持ちを込めながらグレイが返事をする。

「はい。もう大丈夫ですわ」

アリシアが穏やかな表情で頷く。

「グレイ君、久しぶりね」

グレイとアリシアの会話が一段落したのを見て、アリシアを更に大人にして髪を青色にしたような美人・・・ウェンディが話しかけてくる。

「ウェンディ様、お久しぶりでございます」

グレイが畏まりながら、ウェンディに返事をする。

ウェンディにグレイが会うのは何だかんだで2ヶ月ぶりくらいである。

「畏まらないで頂戴。主人から聞いているわ。アリシアの命を2度も救ってくれただけでなくバルム家のことまで救ってくれて本当にありがとう」

そう言うと、ウェンディが頭を深く下げる。

そして、アリシアやリリィ、ソル達もウェンディに合わせて頭を下げた。

「私がしたくてしたことですからお気になさらないでください」

グレイがそう言うと、

「ありがとう。私達を救ってくれた人があなたのような人で本当に良かった」

ウェンディが頭を上げながらそう言ったのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。

モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。 日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。 今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。 そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。 特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

学園長からのお話です

ラララキヲ
ファンタジー
 学園長の声が学園に響く。 『昨日、平民の女生徒の食べていたお菓子を高位貴族の令息5人が取り囲んで奪うという事がありました』  昨日ピンク髪の女生徒からクッキーを貰った自覚のある王太子とその側近4人は項垂れながらその声を聴いていた。  学園長の話はまだまだ続く…… ◇テンプレ乙女ゲームになりそうな登場人物(しかし出てこない) ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

いらないスキル買い取ります!スキル「買取」で異世界最強!

町島航太
ファンタジー
 ひょんな事から異世界に召喚された木村哲郎は、救世主として期待されたが、手に入れたスキルはまさかの「買取」。  ハズレと看做され、城を追い出された哲郎だったが、スキル「買取」は他人のスキルを買い取れるという優れ物であった。

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?

夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。 気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。 落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。 彼らはこの世界の神。 キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。 ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。 「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」

幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話

島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。 俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。

『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

mio
ファンタジー
 特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。  神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。 そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。 日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。    神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?  他サイトでも投稿しております。

処理中です...