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第192話
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「えっ・・・何あれ?」
馬車がバルム家の屋敷に近づいて行くとグレイが思わずといった感じで呟く。
「はい?」
グレイの見ている方向をアリシアも見ると、
「あら・・・皆さん無事にお戻りになられたようですわね」
と安心したように呟く。
「無事なのは良かったけど・・・何であんなに大勢で屋敷の前に立っているんだろ?」
グレイはアリシアのコメントには賛同するものの、聞きたい内容はそうではないので続けて尋ねる。
「それは決まってますわ。私《わたくし》達を出迎えるためですわ」
「はい?何で??」
アリシアの答えのような答えではないような気もする言葉にグレイは更に尋ねる。
バルム家の屋敷の前にいる執事やメイドはとても多く、バルム家で働いている者達のほとんど総出なのでは無いかと思われる。
ただ単純な週末の帰宅を出迎えるものでは決して無いし、今までこんなにも屋敷の前に待機していたことは無かった。
大勢で出迎えられたことはあったがここまででは無かった。
「ふふふ・・・グレイったら本当に分かりませんか?」
アリシアがグレイの言葉に一度キョトンとしてから笑みを浮かべて逆に尋ねる。
「・・・え?」
グレイは本当に分からず、声を上げる。
「グレイが先週なされたことは何でしたか?」
アリシアがヒントを出すようにグレイに告げる。
「あっ・・・そうか」
ここまで聞いてグレイは理解した。
「過分にも俺がバルム家を救ったという評価をされていたんだった・・・」
先週の時点では殆どのバルム家の人間が別荘に避難していたが、あれから一週間が経過し、バルム家に戻ってきたのだろう。
そこで、当主であるゾルムや執事であるムスター、もしかしたらメイドのサリア達から事の顛末を聞いたのだろう。
恩人であるグレイ、そして九死に一生を得たアリシアの無事を喜び今の状況になっているのだろう。
「『過分』だなんてとんでもないですわ。『応分』ですわ。グレイの能力なら当然の評価ですもの」
アリシアがグレイの呟きを聞きつけ、考えを改めさせるように発言する。
「うっ・・・分かったよ」
グレイはアリシアの多くは言わないが言外に『もっと自信を持ち、堂々となさってください』と言われていることを理解し、了承の意を示す。
「ふふふ、頼みますわよ。グレイ」
アリシアもグレイに自分の意図が伝わったことを感じ取り微笑む。
そうこうしている間にグレイとアリシアが乗った馬車がバルム家の屋敷の前に到着する。
グレイはいつものように先に馬車を降りて、アリシアが降りやすいようにしようとしたが、グレイの行動を止め、
「先に私《わたくし》が降りますが良ろしいですか?少ししたらお声掛けしますのでその時にいらしてくださいね」
「わ、分かった」
グレイの返事を聞いて満足したアリシアが先に馬車から降りる。
「「「アリシアお嬢様!!!」」」
「「「御無事で本当に良かったです!!!」」」
「「「またお目にかかれて感無量でございます!!!」」」
執事やメイドが感情を込めつつも声を合わせてアリシアの無事を喜ぶ。
それぞれが声を掛けてはアリシアに迷惑を掛けてしまうという思いからだろう。
それでいて形だけにならないように気持ちを込めている。
馬車の中で聞いているグレイでさえ、ジーンとするものであった。
『見事なものだな』
人目につくため、またしばらくの間話せなくなるイズが今の内だとばかりにぼつりと呟く。
グレイがイズの方を向くと、
『執事やメイドのアリシアに対する思い、そして雇われた者達にあそこまで感情的に思われるアリシア自身の人徳。双方ともに素晴らしい』
とイズが理由を話す。
「ああ、全くもってその通りだな」
グレイは自分のことではないが、とても誇らしく感じ、イズの言葉に同意した。
馬車がバルム家の屋敷に近づいて行くとグレイが思わずといった感じで呟く。
「はい?」
グレイの見ている方向をアリシアも見ると、
「あら・・・皆さん無事にお戻りになられたようですわね」
と安心したように呟く。
「無事なのは良かったけど・・・何であんなに大勢で屋敷の前に立っているんだろ?」
グレイはアリシアのコメントには賛同するものの、聞きたい内容はそうではないので続けて尋ねる。
「それは決まってますわ。私《わたくし》達を出迎えるためですわ」
「はい?何で??」
アリシアの答えのような答えではないような気もする言葉にグレイは更に尋ねる。
バルム家の屋敷の前にいる執事やメイドはとても多く、バルム家で働いている者達のほとんど総出なのでは無いかと思われる。
ただ単純な週末の帰宅を出迎えるものでは決して無いし、今までこんなにも屋敷の前に待機していたことは無かった。
大勢で出迎えられたことはあったがここまででは無かった。
「ふふふ・・・グレイったら本当に分かりませんか?」
アリシアがグレイの言葉に一度キョトンとしてから笑みを浮かべて逆に尋ねる。
「・・・え?」
グレイは本当に分からず、声を上げる。
「グレイが先週なされたことは何でしたか?」
アリシアがヒントを出すようにグレイに告げる。
「あっ・・・そうか」
ここまで聞いてグレイは理解した。
「過分にも俺がバルム家を救ったという評価をされていたんだった・・・」
先週の時点では殆どのバルム家の人間が別荘に避難していたが、あれから一週間が経過し、バルム家に戻ってきたのだろう。
そこで、当主であるゾルムや執事であるムスター、もしかしたらメイドのサリア達から事の顛末を聞いたのだろう。
恩人であるグレイ、そして九死に一生を得たアリシアの無事を喜び今の状況になっているのだろう。
「『過分』だなんてとんでもないですわ。『応分』ですわ。グレイの能力なら当然の評価ですもの」
アリシアがグレイの呟きを聞きつけ、考えを改めさせるように発言する。
「うっ・・・分かったよ」
グレイはアリシアの多くは言わないが言外に『もっと自信を持ち、堂々となさってください』と言われていることを理解し、了承の意を示す。
「ふふふ、頼みますわよ。グレイ」
アリシアもグレイに自分の意図が伝わったことを感じ取り微笑む。
そうこうしている間にグレイとアリシアが乗った馬車がバルム家の屋敷の前に到着する。
グレイはいつものように先に馬車を降りて、アリシアが降りやすいようにしようとしたが、グレイの行動を止め、
「先に私《わたくし》が降りますが良ろしいですか?少ししたらお声掛けしますのでその時にいらしてくださいね」
「わ、分かった」
グレイの返事を聞いて満足したアリシアが先に馬車から降りる。
「「「アリシアお嬢様!!!」」」
「「「御無事で本当に良かったです!!!」」」
「「「またお目にかかれて感無量でございます!!!」」」
執事やメイドが感情を込めつつも声を合わせてアリシアの無事を喜ぶ。
それぞれが声を掛けてはアリシアに迷惑を掛けてしまうという思いからだろう。
それでいて形だけにならないように気持ちを込めている。
馬車の中で聞いているグレイでさえ、ジーンとするものであった。
『見事なものだな』
人目につくため、またしばらくの間話せなくなるイズが今の内だとばかりにぼつりと呟く。
グレイがイズの方を向くと、
『執事やメイドのアリシアに対する思い、そして雇われた者達にあそこまで感情的に思われるアリシア自身の人徳。双方ともに素晴らしい』
とイズが理由を話す。
「ああ、全くもってその通りだな」
グレイは自分のことではないが、とても誇らしく感じ、イズの言葉に同意した。
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