他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに

第187話

「では、明日の朝一で参りましょう」

「わかった。またここに来るね」

いつもの場所まで見送るとアリシアが明日の待ち合わせ時間を話す。

グレイは快諾すると、アリシアは手を振りながら貴族女子寮に戻って行く。

「・・・さて、戻るか」

グレイはアリシアが見えなくなると、左肩にいるであろうイズをひと撫でし、自分の部屋に戻っていく。

イズは周りに見られないように自分の姿を消していた。

「・・・」

グレイは明日までの行動をイメージしながら寮の部屋までの道を歩く。

すると、目の前を数人の男子生徒が立ち塞がった。

「・・・何か用か？」

グレイはある程度距離を保った位置で尋ねる。

男子生徒の中の一人が、一歩前に出ると、

「ああ。グレイ・ズー。お前に二つ要求がある」

「何だ？」

男は人差し指を一本立てると、

「まず、『S組』から辞退しろ」

続けて中指を指を二本目を立てると、

「そして、アリシア・エト・バルム様の『付き人』を辞退しろ」

そう言ってのけた。

「何だ？いきなり」

ザッ

目の前の男子生徒以外がグレイの周りを囲う。

（相手は6人か・・・囲まれたな）

グレイは冷静に観察し、状況を把握する。

「それで、どうだ？俺の言う事を素直に聞けば痛い目に合わなくて済むぞ」

目の前の男子生徒がグレイにそう尋ねる。

「何だが知らないが断る」

グレイははっきりと言い切った。

周りに囲まれているのにも関わらず、動じた様子は無い。

（・・・やけに冷静だな）

グレイの前に立つ男子生徒はグレイの様子に違和感を覚える。

（こっちは6人だぞ。普通はもっと慌てるものだろうが・・・まぁ、いい。言う事を聞かないなら仕方ない）

「そうか・・・素直に言う事を聞くなら何もしなかったのだがな・・・痛い目に合って貰うぞ」

グレイは相手の動きを見ながら身構える。

「やれ」

男子生徒が周りの連中に合図を送ると、男子生徒達が襲い掛かろうと一斉に動き出す。

「やめておけ」

「「「！？」」」

グレイと男子生徒達が戦う寸前、この場にはいなかったものの声がし、全員の動きが止まる。

「誰だっ！！」

首謀者と思われる男子生徒が声を荒げる。

すると、建物の陰から一人の男子生徒が現れた。

「あなたは・・・マードック・ゾルゲ様」

首謀者は驚いたようにその人物の名前を呼ぶ。

「何だ？俺の事を知っているのか？なら話は早い、今ならまだ間に合う。そのまま回れ右をしてここから立ち去れ。お前たちではその男には勝てないぞ」

「なっ！？・・・我々がこんな平民に劣ると言うのですかっ！！」

ゾルゲの思わぬ言葉に驚く首謀者。

「試すのは勝手だが、そのつもりなら俺も加勢するぞ」

「くっ！・・・仕方ない。お前たち行くぞ」

首謀者はゾルゲの言葉に自分たちの不利を悟ったのか、苦々しい顔をした後立ち去っていった。