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第186話

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「そうだったのか・・・」

アリシアとの午後の訓練以外にもグレイは毎朝肉体的なトレーニングと魔法のトレーニングをしている。

そして、日中に影響しないように【エリクサー】を飲むようにしていた。

才能の塊であるアリシアとは比べると適わないが、グレイの頑張りは着実に実を結んでいたのだ。

(これからも出来る限り続けよう)

『ああ。グレイ・・・お前は本当に頑張っているよ』

イズがグレイの心の内を見透かしたかのように褒める。

ここ最近の中でイズほどグレイの傍に居てくれた存在はいない。

だからこそイズはグレイのことを良く知っている。

「ありがとう・・・」

グレイは素直にイズに礼をいう。

「私《わたくし》の目から見ても本当にグレイは頑張ってくださってますわ」

イズの次にグレイの傍に居てくれるアリシアも褒めてくれる。

(イズさんは良いですわね。グレイの傍にいられて)

「アリシアもありがとう」

(やばい・・・ちょっと泣いてしまいそうだ)

別に義務感で頑張っている訳ではない。

アリシアを守るために己を肉体的にも精神的にも鍛えようとしていただけだ。

だが、今まで認められることに慣れていなかったグレイにとっては二人からの労いの言葉がとても嬉しかった。

(よし、もっと頑張ろうかな・・・夜の訓練もするか)

グレイは嬉しくなり、トレーニングを追加することを検討する。

【エリクサー】を使えば肉体的な疲労は気にしなくていい。

となるとあとは、精神的なものだけだった。

『あぁ、グレイよ』

ここでイズが申し訳なさそうにグレイに話し掛ける。

「なんだ?」

『もしこれ以上訓練を増やそうとしているならしばらくはやめておいた方が良いぞ』

「え?何でだ?」

『グレイの今のペースが現時点での最高速度だ。無理して訓練量を増やすと急激な変化に体が耐えられない。明日は週末だろう?できればその間の訓練も止めておいた方が良い』

「!?・・・そうか、分かった・・・」

グレイはイズの言葉を聞いてがっかりしながら了承する。

「グレイ、そのようにがっかりしないでください。定期的な休養は大事ですわよ」

グレイとイズの話を黙って聞いていたアリシアが意気消沈したグレイに向かって慰めの言葉をかける。

「・・・それもそうか」

グレイは目を瞑る。

(無理をしても仕方がない。週末はアリシアとイズの言葉通り体を休めよう)

「ところで、週末はどうされますか?できれば私《わたくし》は実家に戻ろうと思うのですが・・・」

アリシアがグレイの様子を見ながら尋ねてくる。

「あっ、そうか。ゾルム様以外の御家族にアリシアの無事を知らせないとだしね。もちろん、アリシアに付いていくよ」

グレイはアリシアがナガリアとの最終決戦後に避難していたゾルム以外の家族と会っていないことを思い出す。

「ありがとうございますわ。はい、その通りです」

アリシアはグレイの言葉にとても嬉しそうに笑顔になった。
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