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第178話
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「それで、全体的にはどうだった?」
グレイが緊張しながら改めてアリシアに尋ねる。
「はっきり申し上げて素晴らしかったですわ」
アリシアは間髪入れずにグレイの質問に答える。
「特に、状況に応じての咄嗟の判断と思い切りの良さは一級品ですわ」
「あ・・・ありがとう。そんなに褒められたのは初めてだから照れるなぁ」
グレイはアリシアのまっすぐな誉め言葉に頭をかいて照れる。
「ふふふ。自信を持ってください」
アリシアは笑顔でグレイにそう言った後、真面目な顔をし続ける。
「ですが、グレイの戦い方は初見でこそ活きますわ。如何に手の内を見せずに戦いを進めるかどうかが勝ち抜いていく鍵になります」
グレイの戦い方は基本的に相手の意表を突くことで勝機を見出している。
『炎の魔法が来たら避けるはずだ』
『氷の魔法が来たら跳んで避けるはずだ』
『片腕を負傷したらもう片方の腕で攻撃してくるはずだ』
といった魔法がほとんど使えないグレイならこうするだろうという予想を上手く利用し裏を掻くことこそが真骨頂と言っても良い。
そのため、試合を重ねるたびに自分の手札を晒していかなければならないトーナメント戦ははっきり言ってどんどん不利になっていってしまうのだ。
「・・・そうだね。色々考えておかないと・・・」
グレイはアリシアの的確な指摘に考え込む。
「ひとまず本日のところはこれくらいにしておきましょう。グレイの言った実戦訓練というのは手札が知られても戦えるようにするためのものでもあるのでしょうし。明日の午後からに備えて体を休めましょう」
アリシアは、ここで悩んでもあまりいい考えは浮かばないと思い、グレイにそう提案する。
グレイは、アリシアの言葉に少し肩の力を抜くと、
「それもそうだね。ありがとう」
素直に礼を言う。
「あ、そうだ。アリシアが良ければ少し寄りたいところがあるんだけど良いかな?」
「寄りたいところですか?」
「うん。寮で待っているイズのために本を借りて帰りたくてさ」
流石にイズを連れて授業を受ける訳にはいかなかったため、部屋でお留守番をして貰っていた。
「そういうことですか。もちろん、良いですわよ」
「ありがとう。できれば、お薦めの本とかも選んでくれると助かるんだけど・・・」
グレイが少し気まずそうにそう言う。
「そのようなことでしたら遠慮はいりませんわ。早速参りましょう」
アリシアはグレイの申し出に快諾すると、訓練室を出る準備をする。
「うん。ありがとう」
グレイはほっとしながら訓練室を先に出る。
アリシアが訓練室の鍵を持っているため、グレイの後に続く。
(それにしても、先ほどのグレイとの戦いは肝が冷えましたわ。私《わたくし》がグレイの出来ることを把握しているからこそ何とかなりましたが、初見なら負けていたかもしれません。それに・・・)
アリシアは考える。
恐らく、グレイが先日見た執事との戦いの時のような強烈なプレッシャーを放っていたら間違いなく負けていたのは自分の方だったのだと。
幸いにして、自分相手だったからこそグレイがあの時ほどのプレッシャーを出せなかったとは気づいてはいたがもしと思ってしまう自分がいる。
(・・・ですが、それ以上にグレイが私《わたくし》のことをそこまで想ってくれている証明みたいなものですから良い気分ですわ)
アリシアはグレイが自分のことを大切にしてくれていることを今日の実戦訓練でも知ることができて笑顔が込みあげてくるのであった。
グレイが緊張しながら改めてアリシアに尋ねる。
「はっきり申し上げて素晴らしかったですわ」
アリシアは間髪入れずにグレイの質問に答える。
「特に、状況に応じての咄嗟の判断と思い切りの良さは一級品ですわ」
「あ・・・ありがとう。そんなに褒められたのは初めてだから照れるなぁ」
グレイはアリシアのまっすぐな誉め言葉に頭をかいて照れる。
「ふふふ。自信を持ってください」
アリシアは笑顔でグレイにそう言った後、真面目な顔をし続ける。
「ですが、グレイの戦い方は初見でこそ活きますわ。如何に手の内を見せずに戦いを進めるかどうかが勝ち抜いていく鍵になります」
グレイの戦い方は基本的に相手の意表を突くことで勝機を見出している。
『炎の魔法が来たら避けるはずだ』
『氷の魔法が来たら跳んで避けるはずだ』
『片腕を負傷したらもう片方の腕で攻撃してくるはずだ』
といった魔法がほとんど使えないグレイならこうするだろうという予想を上手く利用し裏を掻くことこそが真骨頂と言っても良い。
そのため、試合を重ねるたびに自分の手札を晒していかなければならないトーナメント戦ははっきり言ってどんどん不利になっていってしまうのだ。
「・・・そうだね。色々考えておかないと・・・」
グレイはアリシアの的確な指摘に考え込む。
「ひとまず本日のところはこれくらいにしておきましょう。グレイの言った実戦訓練というのは手札が知られても戦えるようにするためのものでもあるのでしょうし。明日の午後からに備えて体を休めましょう」
アリシアは、ここで悩んでもあまりいい考えは浮かばないと思い、グレイにそう提案する。
グレイは、アリシアの言葉に少し肩の力を抜くと、
「それもそうだね。ありがとう」
素直に礼を言う。
「あ、そうだ。アリシアが良ければ少し寄りたいところがあるんだけど良いかな?」
「寄りたいところですか?」
「うん。寮で待っているイズのために本を借りて帰りたくてさ」
流石にイズを連れて授業を受ける訳にはいかなかったため、部屋でお留守番をして貰っていた。
「そういうことですか。もちろん、良いですわよ」
「ありがとう。できれば、お薦めの本とかも選んでくれると助かるんだけど・・・」
グレイが少し気まずそうにそう言う。
「そのようなことでしたら遠慮はいりませんわ。早速参りましょう」
アリシアはグレイの申し出に快諾すると、訓練室を出る準備をする。
「うん。ありがとう」
グレイはほっとしながら訓練室を先に出る。
アリシアが訓練室の鍵を持っているため、グレイの後に続く。
(それにしても、先ほどのグレイとの戦いは肝が冷えましたわ。私《わたくし》がグレイの出来ることを把握しているからこそ何とかなりましたが、初見なら負けていたかもしれません。それに・・・)
アリシアは考える。
恐らく、グレイが先日見た執事との戦いの時のような強烈なプレッシャーを放っていたら間違いなく負けていたのは自分の方だったのだと。
幸いにして、自分相手だったからこそグレイがあの時ほどのプレッシャーを出せなかったとは気づいてはいたがもしと思ってしまう自分がいる。
(・・・ですが、それ以上にグレイが私《わたくし》のことをそこまで想ってくれている証明みたいなものですから良い気分ですわ)
アリシアはグレイが自分のことを大切にしてくれていることを今日の実戦訓練でも知ることができて笑顔が込みあげてくるのであった。
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