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第168話

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「では、まず一週間後のS組での選抜の時までどのように過ごすかを改めてお話ししましょうか」

グレイがアリシアから受け取ったチケットを大事そうに財布にしまうのを見届けた後、アリシアがそのように提案する。

「そうだね。【魔法武闘会】について知った今、アリシアの期待に答えられるかは分からないけどチャレンジはしようと思うからこの一週間をどう使うかは大事だね」

アリシアから色々と説明を受けたグレイは当初の考えを少し柔軟にさせる意思を示す。

アリシアはグレイの返事を受け、満足そうに頷くと、

「仰る通りですわ。それでは具体的にはどうしましょうか?」

「うーん。そうだな。正直なところ、訓練するなら実戦訓練をしたいな」

グレイは考える素振りをした後、そのように答える。

「実戦・・・ですか?理由をお聞きしてもよろしいでしょうか?」

アリシアの目には同年代でグレイ程実戦を潜っている生徒も珍しいと思っているため、不思議に思い、尋ねる。

グレイはこの一ヶ月と少しの間にアリシアが知っているだけでも4回は命懸けの戦いをしているのだ。

はっきり言って異常なくらいである。

実際には4回どころでは無いのだがグレイかイズが語ろうとしない限りアリシアがその事を知ることはない。

「うん。アリシアには格好悪い所を見せたくないからあんまり言いたくなかったんだけど、アリシアから【身体強化魔法】を教えて貰ってからはイズにも手伝って貰ってなるべく訓練はしてるんだよね。だけど、個人的に鍛えているだけだから実戦だとどのくらい効果が出ているか分からなくてできれば把握しておきたいんだよね」

グレイが照れ臭そうに頭を掻きながら、アリシアに返事をする。

「そうだったのですね!納得いたしましたわ」

アリシアが得心がいったという様子で頷く。

グレイが訓練をしていたのはバルム家の屋敷で見ていたのと、話し掛けにはいけなかったが実はバスター家の屋敷でも見かけてはいたため想像はしていた。

そのためすんなりとグレイの言葉を理解する。

「確かに個人的に訓練をしているだけではその効果は実感しづらいですものね。では、実戦訓練をしましょうか」

アリシアがそのように提案する。

「ありがとう。助かる」

「ふふふ、とんでもないですわ」

アリシアが優しく微笑む。

(うわっ。めちゃくちゃ可愛い)

グレイはアリシアの笑顔に見惚れそうになるのを誤魔化すように、

「そ、それでアリシアはどんな訓練をしたいとかあるの?」

吃りながらも話を変える。

「私《わたくし》はひとまず結構ですわ。この一週間はグレイに合わせます」

アリシアははっきりと答える。

「え!?流石にそれは・・・」

グレイが困ったように呟く。

「大丈夫ですわ。グレイと実戦訓練を行うというだけでも私《わたくし》のためになりますしね」

アリシアがグレイが納得するように言葉を選ぶ。

「そう?アリシアがそう言ってくれるなら、良いかな」

グレイはアリシアに自分の訓練に付き合わせてしまうという罪悪感をひとまずこの一週間はという事を免罪符にアリシアの言葉に納得したのだった。
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