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第164話

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「畏まりましたわ・・・折角ですので、黒板をお借りしましょう」

アリシアはグレイのお願いを快く受け入れると、席を立ち、黒板に向かって歩いて行く。

そして、小気味の良い音を出しながら何やら書き始めていった。

「さて、まず【魔法武闘会】が行われる場所ですが、こちらになります」

と、アリシアは自分が書いた魔法学園の上面図の中の一部、一番北に位置する建物を指差す。

「年に一度しか使われることのない【魔法武闘技場】です。魔法学園を覆うようにしている結界に加えて更に【魔法武闘技場】を覆い、入ることが出来ません」

「・・・そんな建物があったんだ・・・」

グレイは全く興味が無かったのでそのような建物すら知らなかった。

「でも、なんでわざわざ更に結界を張っているんだ?」

「良い質問ですわね。それは、ずばり不正防止のためです」

アリシアが【魔法武闘技場】の周りに書いた結界の傍に不正防止と書く。

「不正防止?その【魔法武闘会】っていうのはそこまで注目されるものなのか?」

グレイは違和感を感じて更に尋ねる。

【魔法武闘会】とはいっても16~18歳のまだ20歳にも満たない生徒たちの戦いに不正が起きる必要性がピンと来なかった。

「ええ。もちろんですわ。この【魔法武闘会】は王国中の所謂上流階級や有力者達、更に他国の方からもかなり注目されます。この大会で3位以上に一度でも入ればその注目度は計り知れません。将来を約束されると言っても過言ではありませんわ」

アリシアが力説する。

「そ、そこまでなんだ・・・それだったら不正があってもおかしくないだろうな」

グレイはアリシアの言葉に納得する。

「はい。仰る通りです。しかも、この【魔法武闘会】で優勝すると【証《あかし》】が貰えます」

「【証《あかし》】?」

「はい。そうです。この【証《あかし》】があることであらゆることに優遇され、あくまで付帯的なものですが、今までの学費や魔法学園内での買い物など全て無料になります」

「えっ・・・それって・・・」

グレイはアリシアの言葉を聞いて冷や汗を流し始める。

【証《あかし》】に学費などが無料という言葉に思い当たる物があったのだ。

「ふふふふ、そうですわ。【魔功章】のことですわ」

とアリシアがグレイを見ながら少しいたづらっぽく言う。

「まじか・・・凄い代物とは思っていたけど、あれってそこまで凄い代物だったなんて・・・」

グレイは寮の部屋の引き出しの奥にしまってある金色に輝くバッチを思い出す。

「そうですわよ。【魔法武闘会】で優勝せずしてあれを手にするのは本当に稀なのですわ」

「よ、よかった・・・普段使いしないようにしていて」

グレイはアリシアの言葉を聞いて青くなる。

そんなにも凄い代物を4年生のたかだか平民が持っているなんて知られたら怒り狂った奴らに何をされるか分かったものじゃない。

「うん。やっぱり、今後も引き出しの奥に入れたままにしておこう」

グレイは改めて固く決心した。

「そうですわね。それが宜しいかと存じますわ」

アリシアもグレイの呟きに同意したのであった。
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