他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに

第162話

「本当によろしいのですか？」

ユイが出ていった教室でアリシアがグレイに尋ねる。

「私《わたくし》は1人だけ【魔法武闘会】に参加することになったのでこの一週間をどのように過ごすかグレイと相談したかっただけなのですが・・・」

アリシアはグレイと話し合うには周りの目は避けたいと考えていた。

そのため、他のクラスメイトが出ていくタイミングを待っていたのだ。

グレイはアリシアの『付き人』である。

そのため、皆と同じように腰を浮かし席を立つことはあってもアリシアの動かない様子からひとまずは着席して待つと考えていた。

しかし、

（グレイは私《わたくし》の方を一瞬たりとも見なかった上に、席を立つ素振りすら全くしませんでしたわ）

アリシアの予想に反してグレイは動く素振りは全く無かったのだ。

そのため、グレイが先程ユイに話した内容は本当のことだと判断し尋ねることにした。

グレイはアリシアの言葉を聞いてアリシアの方を向くと、

「ん？訓練しなくて良いかってこと？それならもちろん良いよ。一月分の座学の遅れを取り戻す方が重要だし」

正直なところ座学が遅れて試験で落第点を取ることのほうがグレイにとっては恐怖であった。

それが積み重なって進級できないとなると目も当てられない。

ぶっちゃけたところ【魔法武闘会】に出場することでその生徒の評価は上がるだろうが3人とは言っても学年の全体からしたら1人でも3人でも大差ないため、出場出来なくとも影響は無いだろう。

（そもそも魔力が低い俺が出場出来るとは思わないしな・・・）

自分の実力は自分が一番理解している。

腕輪の力や【エリクサー】さえなければグレイは一般人に毛が生えたくらいの実力だと本気で思っている。

「あ・・・、アリシアが【魔法武闘会】本戦のために訓練するのならもちろん付き合うよ」

グレイはその可能性を思い出し、付け加える。

アリシアは目を丸くする。

「ふふふ、授業中まで『付き人』である必要はありませんわ。その時はグレイのしたいことをして良いのですよ」

アリシアは苦笑しながら諭すように告げると、今度はグレイが目を丸くし驚く。

「え？」

その反応が思ったものと違うアリシアも思わず、

「はい？」

疑問符を浮かべる。

グレイは頭を掻きながら、

「・・・そうか。そうだったね。『付き人』とかすっかり忘れてたよ。単純にアリシアの傍に居たいと思っているだけだから」

「っ！？」

グレイの本音としか思えない言葉を聞いたアリシアは嬉しさの余り顔を真っ赤にさせる。

（い・・・今のは不意打ちでしたわ・・・）

その様子を見たグレイも自分が何を言ったかやっと理解し、顔を赤らめる。

「・・・」

「・・・」

2人の間にはしばらくの間、気恥ずかしさからくる沈黙が支配していた。