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第157話
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「おはようございます」
「おはようございます、アリシア様」
「おはようアリシア」
グレイがアリシアの少し後ろをついて歩き、久しぶりのS組の教室に入ると、人気者であるアリシアに対して色々な人が挨拶をする。
アリシアはそれに逐一挨拶を返しながら、席に進む。
(流石、アリシアだ。S組であろうともその人気は陰ることはないな)
グレイはアリシアが教室に入っただけで部屋の明るさが増したようにさえ感じ、誇らしい気持ちになる。
一方、
「おい・・・あいつ・・・」
「ほんとだわ。長期間休んでいて良く顔出せたものだ」
「アリシア様はお優しい。長期間不在だった癖に再び傍に置いているなんて」
「平民の癖に生意気な」
グレイの姿を認めたクラスメイト達は聞こえていないとでも思っているのかコソコソと好き勝手に物を言う。
(・・・いや、あれはわざと聞こえるように言っているな)
グレイは希望的観測は捨て、事実を受け入れる。
よそ見をしていたグレイがふと、アリシアの方に目を向けると立ち止まっているのが目に入る。
そして、若干ではあるが肩が震えているのが見て取れた。
「・・・気にしないで良いですよ」
「ですが・・・」
グレイはアリシアが自分のために起こっていることに気が付き、先手を打つ。
アリシアは振り向きながら言うがグレイは首を振ると、
「私の事はお気になさらないでくださらなくて大丈夫ですよ。さぁ、座りましょう」
席に座ることを促す。
(アリシアが俺のために怒ってくれるのはとても嬉しいが、もしアリシアが何かを言っても一旦は納まるが、少し経てばより一層激しくなるに違いない)
「・・・分かりましたわ。そうしましょう」
アリシアはグレイの言葉に不満そうな様子を一瞬だけ見せたが、すぐに同意すると席に向かう。
アリシアが座った後、グレイは、
(さて・・・困ったぞ・・・)
呆然とする。
(席どこだっけ・・・)
グレイはこの一月ちょっとの間に色々あり過ぎて自分の席の場所などすっかりと忘れていた。
S組に入ってから通っていた日数よりも不在だった日数の方が圧倒的に多い。
席を忘れていてもおかしくはなかった。
(どうしよう。今のクラスの雰囲気の中でアリシアに聞くのは俺を蔑むきっかけになってしまうかもしれない)
グレイは席に着いたアリシアの前でじっと佇むことしかできない。
アリシアはグレイのことを悪く言われ、内心で腹が立っていたため気づくのが遅れたが、目の前にグレイが相変わらず立っていることに気づく。
(・・・グレイ?)
どうしたのだろうとキョトンとする。
アリシアはじっとグレイを見つめる。
見つめ返してくるグレイ。そこには焦りの色が見えた。
(グレイが困っているようですわ・・・もしかして・・・)
アリシアはグレイが呆然としている理由について察すると、
「私《わたくし》はもう大丈夫ですからあなたも隣にお座りになって」
と左側の席を見ながら促す。
「畏まりました」
グレイはほっとした様子を見せながらアリシアの左隣の席に着く。
(た・・・助かった。後で感謝を示しておこう)
グレイはまずは心の中でアリシアに感謝した。
「おはようございます、アリシア様」
「おはようアリシア」
グレイがアリシアの少し後ろをついて歩き、久しぶりのS組の教室に入ると、人気者であるアリシアに対して色々な人が挨拶をする。
アリシアはそれに逐一挨拶を返しながら、席に進む。
(流石、アリシアだ。S組であろうともその人気は陰ることはないな)
グレイはアリシアが教室に入っただけで部屋の明るさが増したようにさえ感じ、誇らしい気持ちになる。
一方、
「おい・・・あいつ・・・」
「ほんとだわ。長期間休んでいて良く顔出せたものだ」
「アリシア様はお優しい。長期間不在だった癖に再び傍に置いているなんて」
「平民の癖に生意気な」
グレイの姿を認めたクラスメイト達は聞こえていないとでも思っているのかコソコソと好き勝手に物を言う。
(・・・いや、あれはわざと聞こえるように言っているな)
グレイは希望的観測は捨て、事実を受け入れる。
よそ見をしていたグレイがふと、アリシアの方に目を向けると立ち止まっているのが目に入る。
そして、若干ではあるが肩が震えているのが見て取れた。
「・・・気にしないで良いですよ」
「ですが・・・」
グレイはアリシアが自分のために起こっていることに気が付き、先手を打つ。
アリシアは振り向きながら言うがグレイは首を振ると、
「私の事はお気になさらないでくださらなくて大丈夫ですよ。さぁ、座りましょう」
席に座ることを促す。
(アリシアが俺のために怒ってくれるのはとても嬉しいが、もしアリシアが何かを言っても一旦は納まるが、少し経てばより一層激しくなるに違いない)
「・・・分かりましたわ。そうしましょう」
アリシアはグレイの言葉に不満そうな様子を一瞬だけ見せたが、すぐに同意すると席に向かう。
アリシアが座った後、グレイは、
(さて・・・困ったぞ・・・)
呆然とする。
(席どこだっけ・・・)
グレイはこの一月ちょっとの間に色々あり過ぎて自分の席の場所などすっかりと忘れていた。
S組に入ってから通っていた日数よりも不在だった日数の方が圧倒的に多い。
席を忘れていてもおかしくはなかった。
(どうしよう。今のクラスの雰囲気の中でアリシアに聞くのは俺を蔑むきっかけになってしまうかもしれない)
グレイは席に着いたアリシアの前でじっと佇むことしかできない。
アリシアはグレイのことを悪く言われ、内心で腹が立っていたため気づくのが遅れたが、目の前にグレイが相変わらず立っていることに気づく。
(・・・グレイ?)
どうしたのだろうとキョトンとする。
アリシアはじっとグレイを見つめる。
見つめ返してくるグレイ。そこには焦りの色が見えた。
(グレイが困っているようですわ・・・もしかして・・・)
アリシアはグレイが呆然としている理由について察すると、
「私《わたくし》はもう大丈夫ですからあなたも隣にお座りになって」
と左側の席を見ながら促す。
「畏まりました」
グレイはほっとした様子を見せながらアリシアの左隣の席に着く。
(た・・・助かった。後で感謝を示しておこう)
グレイはまずは心の中でアリシアに感謝した。
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