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第152話

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「ふぅ・・・疲れた・・・」

暗くなったころに魔法学園に無事戻ったグレイは、アリシアを貴族女子寮の前まで送った後、寮の自室に戻ると椅子に座りながら呟く。

『・・・そうだな。馬車での移動でも疲れる』

イズがグレイの言葉を肯定し、グレイの左肩からクッションの上に移動し、座り込む。

「でも、まぁ今回は何事も無くて良かったよ」

グレイは珍しく、突発的な事件が起きなかったことを思い出し安堵する。

イズは少し意地悪そうな顔をし、

『分からんぞ。たまたま、表面化しなかっただけで水面下では事が進んでいるかもしれん』

「・・・怖いこと言わないでくれよ」

グレイはイズに言葉に非難する。

『気を抜かない方が良いということだ。現代における【魔力過大病】の治療は注目されてしかるべきなのだろう?』

イズがグレイに忠告する。

「そうだな・・・」

グレイはイズの言葉に納得し、気を引き締める。

『それで良い。まず注目されるとしたらアリシアだ。グレイは彼女を守るためにも気を張っていないとだろう?』

「・・・ああ。そうだったな」

グレイの代わりに目立つ位置に立ってくれたアリシア。

グレイは何かあってもアリシアを守るのだと決意を新たにする。

(・・・そうだ。今自分に出来ることをしよう)

グレイは疲れなどに構っている暇はないと、明かりの魔法を出し、訓練を始める。

(そうだ。それでこそ、我が主よ。我はお前が活躍していくことを大いに期待しているぞ)

イズは、グレイの行動を見て、満足そうに頷いた。



「ふぅ・・・流石に疲れましたわ」

自室に戻ったアリシアは、ソファに腰掛けながら呟く。

(お父様にも学園長先生にも事情の概略を手紙にしてお送りしましたので、今回の件で私《わたくし》たちにかかる影響は少なく出来たはずですわ)

アリシアはグレイとの今の状況を守るために自分がとった行動に抜け落ちが無いかを振り返り確認する。

問題ないことを確認した、アリシアはソファの背もたれに深く寄り掛かった。

「・・・それにしてもグレイさんといると本当に色々ありますわね」

アリシアはグレイと出会ってからのことを思い返しながら呟く。

そして、グレイと離ればなれになったひと月のことを思い出す。

「グレイさんが迷宮に飛ばされた時はどうなるかと思いました。・・・あんなことはもう御免ですわ」

アリシアはグレイともう二度と離ればなれになりたくないと心の底から思い、今回の提案をした。

すなわち自分がグレイの代わりにユーマリアを治療したことにするという提案だ。

(正直なところグレイさんの功績を私《わたくし》が奪ってしまうみたいな形になってしまっているので、心苦しかったですが、グレイさんは全くそんなことを思っていませんでしたわね。本当に、欲が無いですわ)

アリシアはグレイの様子を思い出しながら笑みを浮かべる。

(グレイさんのことです。いつか、誤魔化しきれなくなることも度外視して行動を起こす時がきっとありますわ。その時に私《わたくし》ができる事が何なのか今からでも備えておきましょう)

「ですが、その時が来るまではグレイさんとの学園生活を楽しみましょう」

不安なことはいくつもある。

だが、アリシアはその不安に対する策を練りながらも今のかけがえのない時間を楽しもうと笑顔を浮かべるのであった。
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