150 / 339
第149話
しおりを挟む
時は少し遡り、エルリックの家を出発したグレイとアリシアは来た道を馬車で戻っていた。
「アリシアさん、ありがとう。イズもありがとう」
グレイはアリシアとイズに協力して貰った礼を言う。
「お気になさらないでください。少しでもお役に立てたなら幸いですわ」
『我は大したことをしていないから気にするな』
アリシアとイズがそれぞれグレイに応じる。
グレイは嬉しそうにした後、真剣な表情をし、呟く。
「それにしても深く考えれば考えるほど良く分からないな・・・」
「何がでしょうか?」
アリシアが尋ねてくる。
「うん。俺の能力何だけど・・・」
グレイはそう前置きをすると何を疑問に思っているのか説明を始める。
「ユーマリア様に初めて会った4年前、彼女の寿命は何十年も先だったんだ。でも、実際は俺達が来なかったら間違いなく死んでいた。一方、アリシアさんの時は、視える寿命自体からして違ったからこの差は何なのかと思ってさ」
「確かに仰る通りですわね」
アリシアはグレイの言葉に同意すると、少し考えた後、
「もしかすると、ユーマリアさんが今回の【魔力過大病】で亡くなられることは元々無かったのかも知れませんわ」
「えっ?・・・あ、【聖女】様か」
グレイはアリシアの言葉に驚くも、思い当たる理由を呟く。
「はい。エルリックさんの御両親が【聖女】様にユーマリアさんを治療して貰おうとなさっていたという事がユーマリアさんの快復に繋がったのでは無いでしょうか」
「・・・つまり、俺達が来なくてもユーマリア様は治っていたってこと?」
グレイが呆然と呟く。
「はい。3年前に代替わりした今代の【聖女】様は歴代最高峰と言われる方ですから、【魔力過大病】を治せてもおかしくありませんわね」
「・・・そうか」
グレイは馬車の背もたれに大きく寄りかかる。
そして、一度深呼吸をすると、グレイは前のめりになりアリシアの方へ近づくと、
「アリシアさん、申し訳無かった」
頭を下げて謝った。
アリシアは一瞬、きょとんとした後、微笑んで、
「グレイさん、もしかして『無駄な事をした上、私《わたくし》に迷惑をかけた』と思っていらっしゃるのですか?」
「・・・うん」
グレイはアリシアの言葉に素直に頷く。
だってそうだろう?エルリックの手紙を受け取ってからすぐに駆けつけたのが全くの無駄足だった可能性があるのだ。無駄足だけならまだしもアリシアが【魔力過大病】を治したという変に注目を集めてしまうというリスク、そして【エリクサー】の事がバレてしまうリスクがあるのだ。謝りたくもなるだろう。
「ふふふ、イズさんどう思います?」
アリシアはグレイの予想に反して笑った後、グレイの左肩で呆れた表情をしているイズに向かって尋ねる。
『どう思うも何も、グレイはバカだな』
イズははっきりと呟いた。
「アリシアさん、ありがとう。イズもありがとう」
グレイはアリシアとイズに協力して貰った礼を言う。
「お気になさらないでください。少しでもお役に立てたなら幸いですわ」
『我は大したことをしていないから気にするな』
アリシアとイズがそれぞれグレイに応じる。
グレイは嬉しそうにした後、真剣な表情をし、呟く。
「それにしても深く考えれば考えるほど良く分からないな・・・」
「何がでしょうか?」
アリシアが尋ねてくる。
「うん。俺の能力何だけど・・・」
グレイはそう前置きをすると何を疑問に思っているのか説明を始める。
「ユーマリア様に初めて会った4年前、彼女の寿命は何十年も先だったんだ。でも、実際は俺達が来なかったら間違いなく死んでいた。一方、アリシアさんの時は、視える寿命自体からして違ったからこの差は何なのかと思ってさ」
「確かに仰る通りですわね」
アリシアはグレイの言葉に同意すると、少し考えた後、
「もしかすると、ユーマリアさんが今回の【魔力過大病】で亡くなられることは元々無かったのかも知れませんわ」
「えっ?・・・あ、【聖女】様か」
グレイはアリシアの言葉に驚くも、思い当たる理由を呟く。
「はい。エルリックさんの御両親が【聖女】様にユーマリアさんを治療して貰おうとなさっていたという事がユーマリアさんの快復に繋がったのでは無いでしょうか」
「・・・つまり、俺達が来なくてもユーマリア様は治っていたってこと?」
グレイが呆然と呟く。
「はい。3年前に代替わりした今代の【聖女】様は歴代最高峰と言われる方ですから、【魔力過大病】を治せてもおかしくありませんわね」
「・・・そうか」
グレイは馬車の背もたれに大きく寄りかかる。
そして、一度深呼吸をすると、グレイは前のめりになりアリシアの方へ近づくと、
「アリシアさん、申し訳無かった」
頭を下げて謝った。
アリシアは一瞬、きょとんとした後、微笑んで、
「グレイさん、もしかして『無駄な事をした上、私《わたくし》に迷惑をかけた』と思っていらっしゃるのですか?」
「・・・うん」
グレイはアリシアの言葉に素直に頷く。
だってそうだろう?エルリックの手紙を受け取ってからすぐに駆けつけたのが全くの無駄足だった可能性があるのだ。無駄足だけならまだしもアリシアが【魔力過大病】を治したという変に注目を集めてしまうというリスク、そして【エリクサー】の事がバレてしまうリスクがあるのだ。謝りたくもなるだろう。
「ふふふ、イズさんどう思います?」
アリシアはグレイの予想に反して笑った後、グレイの左肩で呆れた表情をしているイズに向かって尋ねる。
『どう思うも何も、グレイはバカだな』
イズははっきりと呟いた。
188
お気に入りに追加
1,441
あなたにおすすめの小説
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
英雄に幼馴染を寝取られたが、物語の完璧美少女メインヒロインに溺愛されてしまった自称脇役の青年の恋愛事情
灰色の鼠
ファンタジー
・他サイト総合日間ランキング1位!
・総合週間ランキング1位!
・ラブコメ日間ランキング1位!
・ラブコメ週間ランキング1位!
・ラブコメ月間ランキング1位獲得!
魔王を討ちとったハーレム主人公のような英雄リュートに結婚を誓い合った幼馴染を奪い取られてしまった脇役ヘリオス。
幼いころから何かの主人公になりたいと願っていたが、どんなに努力をしても自分は舞台上で活躍するような英雄にはなれないことを認め、絶望する。
そんな彼のことを、主人公リュートと結ばれなければならない物語のメインヒロインが異様なまでに執着するようになり、いつしか溺愛されてしまう。
これは脇役モブと、美少女メインヒロインを中心に起きる様々なトラブルを描いたラブコメである———
大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ
鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。
それが約50年前。
聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。
英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。
俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。
でも…英雄は5人もいらないな。
大好きな母と縁を切りました。
むう子
ファンタジー
7歳までは家族円満愛情たっぷりの幸せな家庭で育ったナーシャ。
領地争いで父が戦死。
それを聞いたお母様は寝込み支えてくれたカルノス・シャンドラに親子共々心を開き再婚。
けれど妹が生まれて義父からの虐待を受けることに。
毎日母を想い部屋に閉じこもるナーシャに2年後の政略結婚が決定した。
けれどこの婚約はとても酷いものだった。
そんな時、ナーシャの生まれる前に亡くなった父方のおばあさまと契約していた精霊と出会う。
そこで今までずっと近くに居てくれたメイドの裏切りを知り……
復讐、報復、意趣返し……とにかくあいつらぶっ殺す!!
ポリ 外丸
ファンタジー
強さが求められる一族に産まれた主人公は、その源となる魔力が無いがゆえに過酷な扱いを受けてきた。
12才になる直前、主人公は実の父によってある人間に身柄を受け渡される。
その者は、主人公の魔力無しという特殊なところに興味を持った、ある施設の人間だった。
連れて行かれた先は、人を人として扱うことのないマッドサイエンティストが集まる研究施設で、あらゆる生物を使った実験を行っていた。
主人公も度重なる人体実験によって、人としての原型がなくなるまで使い潰された。
実験によって、とうとう肉体に限界が来た主人公は、使い物にならなくなったと理由でゴミを捨てるように処理場へと放られる。
醜い姿で動くこともままならない主人公は、このような姿にされたことに憤怒し、何としても生き残ることを誓う。
全ては研究所や、一族への復讐を行うために……。
※カクヨム、ノベルバ、小説家になろうにも投稿しています。
救世主パーティーを追放された愛弟子とともにはじめる辺境スローライフ
鈴木竜一
ファンタジー
「おまえを今日限りでパーティーから追放する」
魔族から世界を救う目的で集められた救世主パーティー【ヴェガリス】のリーダー・アルゴがそう言い放った相手は主力メンバー・デレクの愛弟子である見習い女剣士のミレインだった。
表向きは実力不足と言いながら、真の追放理由はしつこく言い寄っていたミレインにこっぴどく振られたからというしょうもないもの。
真相を知ったデレクはとても納得できるものじゃないと憤慨し、あとを追うようにパーティーを抜けると彼女を連れて故郷の田舎町へと戻った。
その後、農業をやりながら冒険者パーティーを結成。
趣味程度にのんびりやろうとしていたが、やがて彼らは新しい仲間とともに【真の救世主】として世界にその名を轟かせていくことになる。
一方、【ヴェガリス】ではアルゴが嫉妬に狂い始めていて……
殺陣を極めたおっさん、異世界に行く。村娘を救う。自由に生きて幸せをつかむ
熊吉(モノカキグマ)
ファンタジー
こんなアラフォーになりたい。そんな思いで書き始めた作品です。
以下、あらすじとなります。
────────────────────────────────────────
令和の世に、[サムライ]と呼ばれた男がいた。
立花 源九郎。
[殺陣]のエキストラから主役へと上り詰め、主演作品を立て続けにヒットさせた男。
その名演は、三作目の主演作品の完成によって歴史に刻まれるはずだった。
しかし、流星のようにあらわれた男は、幻のように姿を消した。
撮影中の[事故]によって重傷を負い、役者生命を絶たれたのだ。
男は、[令和のサムライ]から1人の中年男性、田中 賢二へと戻り、交通警備員として細々と暮らしていた。
ささやかながらも、平穏な、小さな幸せも感じられる日々。
だが40歳の誕生日を迎えた日の夜、賢二は、想像もしなかった事態に巻き込まれ、再びその殺陣の技を振るうこととなる。
殺陣を極めたおっさんの異世界漫遊記、始まります!
※作者より
あらすじを最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
熊吉(モノカキグマ)と申します。
本作は、カクヨムコン8への参加作品となります!
プロット未完成につき、更新も不定期となりますが、もし気に入っていただけましたら、高評価・ブックマーク等、よろしくお願いいたします。
また、作者ツイッター[https://twitter.com/whbtcats]にて、製作状況、おススメの作品、思ったことなど、呟いております。
ぜひ、おいで下さいませ。
どうぞ、熊吉と本作とを、よろしくお願い申し上げます!
※作者他作品紹介・こちらは小説家になろう様、カクヨム様にて公開中です。
[メイド・ルーシェのノルトハーフェン公国中興記]
偶然公爵家のメイドとなった少女が主人公の、近世ヨーロッパ風の世界を舞台とした作品です。
戦乱渦巻く大陸に、少年公爵とメイドが挑みます。
[イリス=オリヴィエ戦記]
大国の思惑に翻弄される祖国の空を守るべく戦う1人のパイロットが、いかに戦争と向き合い、戦い、生きていくか。
濃厚なミリタリー成分と共に書き上げた、100万文字越えの大長編です。
もしよろしければ、お手に取っていただけると嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる