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第149話

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時は少し遡り、エルリックの家を出発したグレイとアリシアは来た道を馬車で戻っていた。

「アリシアさん、ありがとう。イズもありがとう」

グレイはアリシアとイズに協力して貰った礼を言う。

「お気になさらないでください。少しでもお役に立てたなら幸いですわ」

『我は大したことをしていないから気にするな』

アリシアとイズがそれぞれグレイに応じる。

グレイは嬉しそうにした後、真剣な表情をし、呟く。

「それにしても深く考えれば考えるほど良く分からないな・・・」

「何がでしょうか?」

アリシアが尋ねてくる。

「うん。俺の能力何だけど・・・」

グレイはそう前置きをすると何を疑問に思っているのか説明を始める。

「ユーマリア様に初めて会った4年前、彼女の寿命は何十年も先だったんだ。でも、実際は俺達が来なかったら間違いなく死んでいた。一方、アリシアさんの時は、視える寿命自体からして違ったからこの差は何なのかと思ってさ」

「確かに仰る通りですわね」

アリシアはグレイの言葉に同意すると、少し考えた後、

「もしかすると、ユーマリアさんが今回の【魔力過大病】で亡くなられることは元々無かったのかも知れませんわ」

「えっ?・・・あ、【聖女】様か」

グレイはアリシアの言葉に驚くも、思い当たる理由を呟く。

「はい。エルリックさんの御両親が【聖女】様にユーマリアさんを治療して貰おうとなさっていたという事がユーマリアさんの快復に繋がったのでは無いでしょうか」

「・・・つまり、俺達が来なくてもユーマリア様は治っていたってこと?」

グレイが呆然と呟く。

「はい。3年前に代替わりした今代の【聖女】様は歴代最高峰と言われる方ですから、【魔力過大病】を治せてもおかしくありませんわね」

「・・・そうか」

グレイは馬車の背もたれに大きく寄りかかる。

そして、一度深呼吸をすると、グレイは前のめりになりアリシアの方へ近づくと、

「アリシアさん、申し訳無かった」

頭を下げて謝った。

アリシアは一瞬、きょとんとした後、微笑んで、

「グレイさん、もしかして『無駄な事をした上、私《わたくし》に迷惑をかけた』と思っていらっしゃるのですか?」

「・・・うん」

グレイはアリシアの言葉に素直に頷く。

だってそうだろう?エルリックの手紙を受け取ってからすぐに駆けつけたのが全くの無駄足だった可能性があるのだ。無駄足だけならまだしもアリシアが【魔力過大病】を治したという変に注目を集めてしまうというリスク、そして【エリクサー】の事がバレてしまうリスクがあるのだ。謝りたくもなるだろう。

「ふふふ、イズさんどう思います?」

アリシアはグレイの予想に反して笑った後、グレイの左肩で呆れた表情をしているイズに向かって尋ねる。

『どう思うも何も、グレイはバカだな』

イズははっきりと呟いた。
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