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第136話

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『グレイの言うとおりだ。我はまだ魔法学園の人間に殆ど会っていないからな』

「・・・だよなぁ。ちなみにアリシアさんやエルと比べるとどんな感じだ?」

グレイは少し落ち込みながら、再度イズに確認する。

『エルとはあの青年だな。あの者はグレイの三十倍ほどの魔力量を有している』

「さ、・・・三十倍!?」

グレイはまさかそこまでとは思っておらず驚きの声を上げる。

「・・・それもそうか。たしかにエルは魔法学園の中でも優等生だものなぁ・・・」

グレイは無理やり自信を納得させる。

『・・・ちなみにアリシアとグレイの差は・・・百倍だ』

「・・・は?」

イズの続けての言葉にグレイは言葉を失う。

「嘘・・・だろ?」

『嘘なものか。ここで嘘をついても仕方があるまい』

(本当は細かい数字で考えればもう少し離れているがそこまで言う必要はあるまい)

イズは胸中で補足する。

「・・・どうがんばっても魔力量では適わないということがよく理解できたよ・・・」

グレイはしばらくの間肩を落として落ち込む。

(まさかなぁ。そこまでの差があるなんて思っても見なかった)

通常、魔法使いが相手の魔力量を把握する時は感覚的に捉えるだけだ。

せいぜいが普通に比べて魔力量が大きい、凄く大きいなどで表現するか凡そ何倍といったアバウトなものだ。

そのため、イズの言葉は的確な表現であり、何となくの劣等感で済んでいたグレイにとっては知りたくない現実を突きつけられた。

(・・・いや、いいさ。自分で臨んだことだ。逆に魔力量での戦いをしないようにすればいいだけだ)

グレイは自身の拳を見つめる。

(結局、最近の戦いでも肉弾戦がメインだったんだから、その効率を上げるために魔力量に縛られにくい【身体強化魔法】を習得するんだ)

こうしてグレイは、現状把握、そして、何をすべきかの再確認を行うことができた。

(後は、迷わずやるだけだ)

「よし!なら早速始めよう!!」

グレイは自分を鼓舞するように宣言する。

『ああ!そうだな!!』

イズはグレイを落ち込ませてしまったことに少し責任を感じていたため、やる気を出してくれたグレイの宣言を聞いて喜ぶ。

グレイは拳を出すように構える。

「・・・」

『・・・』

「・・・」

『・・・』

両者無言。

そして、しばらくして、

「・・・イズ。魔力ってどうやって移動させるんだ・・・」

照れくさそうに呟く。

『おいぃぃぃぃ!!!』

イズは思わず、大きな声を上げた。



『ふぅ・・・まったく。やり方が分からんならそれっぽい行動をするでないぞ』

しばらくして心を落ち着かせたイズがグレイに呆れたように言う。

「・・・悪かった」

グレイもテンションのままに行動したことを今更ながらに恥じ、イズに謝る。

『・・・まぁ、いい。そもそもグレイは魔力を感じることは出来るのか?』

イズは真面目な顔をして、グレイに尋ねる。

「・・・も、もちろんだ」

グレイは目を泳がせながら答える。

『・・・正直に言え』

イズは疑いの眼でグレイをジトっと見る。

「うっ・・・あれだろ?魔法を使う時に体から何かが抜ける気がする。あれが魔力だろう?」

グレイはイズの目をまともに見られず、他の所を見ながら答えた。
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