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第135話

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「ふぅ。こんなもんで良いか」

エルリックの屋敷の周りを走り出してから数十分。

グレイはあまり汗を出し過ぎても着替えが無いため切りのいいところで中断する。

グレイはなるべく人気のない所に向かう。

「イズ。アリシアさんの教えてくれた【身体強化魔法】の練習をしたいんだけど、手伝ってくれる?」

丁度良い木の下に到着するとイズにお願いをする。

『良いぞ。どうすれば良い?』

イズはグレイの肩から飛び立ちちょうどいい石の上に着地するとグレイに尋ねる。

「・・・どうすれば良いかな?」

『・・・おい』

グレイの言葉にイズがツッコミを入れる。

「だって仕方がないじゃないか!あの手本だけで、あとは俺自身で試行錯誤をするしかないって言われたんだからさ。正直どうやって成功しているかを確認するかも良く分からないよ!」

グレイは動揺しながら少し嘆くように言う。

『そ、そうか・・・』

イズはグレイの剣幕に少し驚く。

『そうだな・・・あの時のアリシアは魔力を必要な個所に割り振っているように感じたぞ』

イズがアリシアが【身体強化魔法】を使った時のことを思い出しながら呟く。

「魔力を必要な個所へ?」

『ああ、そうだ。拳、腰、腕、足などに魔力を集中させていたな』

「・・・なるほど」

グレイはイズの言葉で考えをまとめる。

「そういえばアリシアさんが言ってたね『例えば先ほどの攻撃ですが、単純に拳だけを強化した訳ではありません。踏み込むための足、回転を加える腰、腕そして拳と力の流れにそって魔法で強化します。そうすることで通常の攻撃力を何倍、何十倍にも高めることができます』って。ということは魔力を集中させることと強化をするということは同じなのかな?」

『おそらく違う。だが、魔力を集中させることと強化は連動していると言っても過言では無いだろう。どうだ?まずは、魔力を意識することから始めてみては?』

イズが一度首を振り、グレイにそのように提案する。

「なるほど。正直どうやったらいいか分からなかったから助かったよ。イズ、ありがとう」

グレイは当面の目標が出来たため、イズに礼を言う。

『気にするな』

イズはまんざらでもない様子でグレイにそう答える。

「ところでイズは魔力を可視化出来るのか?」

グレイが今更な質問をする。

『・・・今更だな。もちろんできるぞ』

イズが呆れたように答える。

「凄いな。となると、俺の魔力量も見て分かるってこと?」

グレイは感心しながらイズに尋ねる。

『もちろんだ。・・・聞きたいか?』

イズが真剣な表情で尋ねる。

「・・・頼む」

グレイは迷った後、イズにお願いする。

『数値で見る訳では無いから比較になるが、グレイの魔力量は平均の人以下だ』

イズがオブラートに包んでも仕方がないと思い、はっきりと伝える。

「・・・そうか。平均の人というのは、当然魔法学園の平均では無くて一般の人以下ということだよな?」

グレイは分かっていたとは言え、直接言われるとくるものがあり、テンションを下げながらイズに尋ねる。
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