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第130話

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「・・・グレイさん」

食事も終盤にさしかかった頃、アリシアがグレイを呼ぶ。

「?何、アリシアさん?」

グレイはフォークに刺していた肉を皿に戻し、アリシアに尋ねる。

「ユーマリアさん・・・可愛かったですわね」

「・・・」

唐突なこの質問に対してグレイは何と答えたら良いのか分からず、沈黙する。

口の中に何かあったら、吹き出していたかも知れない。

(アリシアさん・・・どうしたんだろ?)

グレイは珍しく頭をフル稼働させる。

(もし、同意したらどうなるんだ?そして否定したらどうなる?)

グレイはアリシアの反応を予想するが答えが出ない。

グレイがアリシアを見ると、アリシアはじっとグレイの目を見ていた。

(ええい。正直に答えよう)

「・・・そうだね。エルリックそっくりだ」

心臓の鼓動を早くさせながらそう答える。

だが、アリシアが続けて言った言葉はグレイの予想を上回った。

「・・・そのような方から『どのようなことでもさせて頂きます』と言われておりましたが宜しかったのですか?」

グレイはアリシアの表情から何を考えているのかを必死で読み取ろうとするが、

(だめだ・・・全く読めない)

グレイにはアリシアが何を考えているのか全く分からない。

となれば、先程と同様に正直に答えるしかないと結論づける。

「アリシアさんが何を考えてのセリフかは分からないけど別に後悔とかはないよ。俺が何かをするのは見返りを求めているからじゃない。そうしたいと思っているから行動するだけだから」

「・・・」

アリシアはグレイの言葉に沈黙する。

「ふふふ、そうですか。グレイさんらしいですわね」

ここでようやくアリシアは表情が読めなかった状態を解いて、朗らかに笑う。

(ほっ、良かった)

その表情を見たグレイはやっと安心する。

アリシアはアリシアで、

(私《わたくし》としたことがするつもりではない意地悪をグレイさんにしてしまいましたわ。グレイさんの気持ちが他の方に向いていないようで安心しました。はっ・・・もしかしてこれが嫉妬と言う感情ですの!?)

アリシアは普段の自分では考えられない行動に自分自身で驚いていた。

グレイは他の女性に対して目移りしたりしない。

まだ、知り合って少ししかしていないにも関わらず、すぐに理解出来た。

だが、外から見えることなんてどこまで正しいか分からない。

ユーマリアのような美少女からあのようなことを言われた時のグレイの反応はアリシアをほっとさせるには充分であったが、ついつい不安な気持ちが抑えられずに聞いてしまったのだ。

アリシアは今までの自分には無かった感情に戸惑った。

そして、更に確認したくなってあの事を尋ねる。

「あの・・・グレイさん?」

「ん、どうしたの?」

グレイはアリシアの様子がいつも通りに戻ったのに安心しきっていたため、お茶を口につけながら気軽に聞き返す。

「何だかんだで時間が過ぎてしまったので聞けなかったのですが、先日私《わたくし》がナガリア達に殺されそうになった時に駆けつけてくださったグレイさんが『よくも俺のアリシアを殺そうとしてくれたな』って言ってくださったように記憶しているのですが私《わたくし》の聞き間違えではありませんわよね?」

ぶぅーーー

グレイは完全に動揺し、飲みかけていたお茶を盛大に吹き出したのであった。
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