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第122話

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「グレイ・・・無事だったの?」

エルリックはよろよろとグレイに近づきながら尋ねる。

「ああ。かなりヤバかったけどひとまず生きてる」

「良かった。本当に。そして来てくれてありがとう」

エルリックがグレイに頭を下げる。

ここで初めてグレイの他にもう一人いることに気づく。

「アリシアさん!あなたまで来てくださるとは。ありがとうございます」

エルリックは慌てて涙を拭うとアリシアに対しても頭を下げる。

通常であれば3大貴族であるアリシアをさしおいて付き人であるグレイに対して真っ先に挨拶をしたエルリックの行為は罰を受けてもおかしくない。

だが、アリシアはそのことに全く気にした様子もなく、

「とんでもないですわ。それで入れてくださるのかしら?」

和やかに尋ねる。

「っ!?もちろんです。是非ともお入りください!」

思わぬグレイの来訪に驚きすぎたエルリックは普段では決してやらない失敗を犯してしまったのでビクついていたが、このアリシアの言葉を聞いてホッとする。

エルリックはその場で振り返ると、付いてきていた執事やメイドに指示を出す。

「誰か、部屋の用意をしてくれ。こちらの方々は3大貴族であるバルム家の御令嬢とその付き人だ。粗相の無いように充分配慮してくれ」

「「「はっ!畏まりました!!」」」

エルリックの指示に執事やメイドが気持ちの良い返事を揃えてする。

「敷地際にいる馬車と御者の方のこともよろしく頼むよ」

エルリックは外にいる馬車と御者のことにも配慮し指示を出すと、グレイとアリシアを中に案内する。

少し歩いてから、

「部屋の準備が出来るまで応接室でお待ち頂けますか?」

二人に尋ねる。

エルリックの気持ちとしてはすぐにでもグレイをユーマリアに会わせてあげたかった。

しかし、ユーマリアは寝ているし旅疲れしている二人に対してそのお願いをするのは酷だと思ったエルリックはグッと堪える。

(大丈夫。グレイがここまで来てくれたんだし、明日ユーマリアに会ってもらおう)

ガシッ

「っ!?」

予想に反して、応接室に向かおうとしたエルリックの肩をグレイが掴む。

エルリックは驚いてグレイの方を向くと、

「夜分遅くに申し訳ないがエルリックの妹さんの所へ連れて行ってくれないか?」

まるでエルリックの迷いを知っていたかのように提案してくれる。

(まさか、グレイからそう言ってもらえるなんて・・・)

エルリックは内心で喜びながらアリシアの方を向くと、

「私《わたくし》もグレイさんと同じ気持ちです。是非とも御紹介ください」

と快諾した。

「・・・畏まりました。どうぞ、こちらへ」

エルリックは浮足立ちながら案内する場所を変更する。

案内している間、エルリックは後ろを振り返る事ができなかった。

(・・・ありがとう)

こみ上げて来るものがあり過ぎて涙が止まらなかったからだ。
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