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第119話

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すぐにぐっすりと眠ったユーマリアの姿をしばらく見つめるエルリック。

「・・・」

(せめてユーマリアとグレイを会わせてあげたかった)

思うのはもはやその事だけであった。

実は、エルリックは4年前のあの日にユーマリアの気持ちを前向きにガラッと変えてくれた人物に興味を持った。

名前は今度会う時にと言われていたユーマリアだったが去っていった人の身体的特徴は覚えていた。

その事を教えてもらったエルリックは自分もちょうど魔法学園に行くつもりだった事もありその人物を探すことにしたのだ。

もちろんこの事はユーマリアは内緒である。

魔法学園の生徒はかなり多いし、ユーマリアから聞いた身体的特徴の人物は該当者がかなりいるはずで見つかるかも分からなかったからである。

エルリックが魔法学園に入学してから数ヶ月してようやくユーマリアと会ったのがグレイであると確信したのだ。

エルリックは早速別のクラスだったグレイのところへ行くと、

『僕は君のファンになった!是非とも友達になって欲しい』

と言い、そこをきっかけにグレイと仲良くなっていった。

別のクラスだったのであまり接点は無かったがエルリックはグレイと交流する内に親友と呼べるくらいに自分がグレイと仲良くなっていっていることを実感していった。

2年毎のクラス替えの時にグレイと一緒のクラスになった時はとても喜んだものだった。

だが、ユーマリアの事を話す訳にはいかなかった。

タイミングを見てさり気なくユーマリアとグレイを会わせようと考えていた矢先にグレイが拉致されてしまい生死不明に、そしてユーマリアの危篤という事態に陥ってしまったのだ。

この話を別の人が聞いたらもしかしたらユーマリアに対して長生きするなどといい加減な事を言ったグレイに怒る人がいたかも知れない。

だが、エルリックはユーマリアに生きる活力をくれたグレイには感謝しか無かった。

(藁にもすがる思いでグレイ宛に手紙を残したけど、世の中そんなに甘くないよね)

エルリックはすやすやと眠るユーマリアの顔を見ながら悲しそうに内心で呟いたのであった。





「・・・という事があったんだよ」

馬車の中でグレイは4年前の話をアリシアにし終える。

「そのような事があったのですね」

アリシアはグレイの話に相槌を打ちながらも確信していた。

「恐らく、その少女はエルリックさんの妹さんでしょう」

「え?どうしてそうなるの?」

グレイが不思議そうに尋ねる。

「まず、平民の子供に金髪の者はほぼいないです。次にライオットの町にいる金髪の貴族はバスター家だけのはずです。そして何よりもグレイさんがこうして向かっているという事実がその少女とエルリックさんの妹が同一人物である事を示しているに違いありません」

アリシアは断言した。

「えっと、知らなかった事実があるのだけどそれよりも最後のは納得いかないんだけど・・・」

「まあ、そこは置いておきましょう」

アリシアはグレイの突っ込みをさらりと流すと、

「グレイさんはその少女の病気は知らないのですね?」

「え・・・うん。辛そうだったのは分かったけどそこまでは聞かなかったかな・・・俺も当時は余裕が無くて・・・」

「・・・そうですか。あと、その少女の寿命は視たのですか?」

「ああ。視たよ。長生きするのが分かった。ちなみに名前は視れてない。当時は精神的に不安定で寿命しか視えなくなっていた」

当時を思い出し、少し苦しげにグレイが答えた。
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