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第117話
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「・・・どんなに辛いことがあっても絶対にそのままという訳ではないはずさ。諦めずに生きていればきっと良いことがある」
目の前の人はまるで自分に言い聞かせているようにそう言いました。
「・・・本当にそうでしょうか?私は、病気のせいで今こうして話すだけでも辛くて堪りません。そんな私でも良いことがあるでしょうか?」
気づいた時には、私は、今まで家族には決して言えなかったことを初めて会った目の前の人に言ってました。
「・・・ああ。あるさ。そうでないとやっていられないだろ」
また、目の前の人は再び自分にも言い聞かせるように答えました。
そして、更に不思議なことを言います。
「大丈夫。君は長生きする」
何の根拠もない言葉。
普通でしたら、文句を言いたくなるような内容でした。
ですが、私には目の前のこの人の言葉を不思議と信じてしまいました。
「そう・・・ですか。私、長生き出来るのですね」
バスター家の専属のお医者さんからはどんなに頑張っても15歳までは生きられないだろうと言われてました。
先のない恐怖。
私は今までそれを抱えて生きて来ました。
もしかしたら、今まで私に長生きをすると言ってくれた人が居なかったから私自身が信じたくて信じてしまったに違いありません。
しかし、目の前の人は続けて言いました。
「ああ。君は長生きできる。それだけは間違いない」
今の言葉だけは先ほどまでのように自分に言い聞かせているようなものではありませんでした。
まるで未来が見えるように私に対して断言したのです。
「ほら?立てるかい?」
目の前の人が座り込んでいる私に手を差し出します。
私には今座り込んでいる状態について言っているのではなく、一人で立って頑張れるかと言っているように感じました。
「はい」
私は、目の前の手を掴むことはせず、時間をかけながらも一人で立って見せました。
正直全身が痛くて堪りませんでした。
ですが、何故か目の前の人物に対してそのような面を見せたくありませんでしたので表情に出ないようにぐっと堪えます。
目の前の人は私が立ち上がるまで一度も手を引っ込めたりしませんでした。
「・・・大丈夫そうだね。ひとりで帰れるかい?」
私が立ち上がったのを見届けてから、ようやく手を元の位置に戻した目の前の人はにやりと笑った後続けて聞いてきました。
「大丈夫ですわ。精一杯生きてみます」
私の言葉を聞いて満足したのか、目の前の人は私に背を向けて歩き始めました。
私は思わず、体が痛くなるのにも構わず叫びました。
「あの!」
「ん?」
目の前の人物は立ち止まり、肩越しに振り向いて私を見ます。
「あなたの・・・あなたのお名前を教えていただけませんか?」
私が人の名前を聞いたのは初めてでした。
ですが、目の前の人は言いました。
「そうだな。君が大きくなって俺と会うことがもしあったらその時に名乗るよ。まぁ、大した名前でも無いけどね。だから・・・その時までお互い必死で生き続けよう」
「!?」
私はまさかの切り替えしに驚きました。
ですが、不思議と嫌な気分にはなりませんでした。
「・・・分かりました。では、どちらに向かわれているのかだけでも教えて頂けませんか?」
私は久しぶりに微笑みながら尋ねました。
目の前の人はまるで自分に言い聞かせているようにそう言いました。
「・・・本当にそうでしょうか?私は、病気のせいで今こうして話すだけでも辛くて堪りません。そんな私でも良いことがあるでしょうか?」
気づいた時には、私は、今まで家族には決して言えなかったことを初めて会った目の前の人に言ってました。
「・・・ああ。あるさ。そうでないとやっていられないだろ」
また、目の前の人は再び自分にも言い聞かせるように答えました。
そして、更に不思議なことを言います。
「大丈夫。君は長生きする」
何の根拠もない言葉。
普通でしたら、文句を言いたくなるような内容でした。
ですが、私には目の前のこの人の言葉を不思議と信じてしまいました。
「そう・・・ですか。私、長生き出来るのですね」
バスター家の専属のお医者さんからはどんなに頑張っても15歳までは生きられないだろうと言われてました。
先のない恐怖。
私は今までそれを抱えて生きて来ました。
もしかしたら、今まで私に長生きをすると言ってくれた人が居なかったから私自身が信じたくて信じてしまったに違いありません。
しかし、目の前の人は続けて言いました。
「ああ。君は長生きできる。それだけは間違いない」
今の言葉だけは先ほどまでのように自分に言い聞かせているようなものではありませんでした。
まるで未来が見えるように私に対して断言したのです。
「ほら?立てるかい?」
目の前の人が座り込んでいる私に手を差し出します。
私には今座り込んでいる状態について言っているのではなく、一人で立って頑張れるかと言っているように感じました。
「はい」
私は、目の前の手を掴むことはせず、時間をかけながらも一人で立って見せました。
正直全身が痛くて堪りませんでした。
ですが、何故か目の前の人物に対してそのような面を見せたくありませんでしたので表情に出ないようにぐっと堪えます。
目の前の人は私が立ち上がるまで一度も手を引っ込めたりしませんでした。
「・・・大丈夫そうだね。ひとりで帰れるかい?」
私が立ち上がったのを見届けてから、ようやく手を元の位置に戻した目の前の人はにやりと笑った後続けて聞いてきました。
「大丈夫ですわ。精一杯生きてみます」
私の言葉を聞いて満足したのか、目の前の人は私に背を向けて歩き始めました。
私は思わず、体が痛くなるのにも構わず叫びました。
「あの!」
「ん?」
目の前の人物は立ち止まり、肩越しに振り向いて私を見ます。
「あなたの・・・あなたのお名前を教えていただけませんか?」
私が人の名前を聞いたのは初めてでした。
ですが、目の前の人は言いました。
「そうだな。君が大きくなって俺と会うことがもしあったらその時に名乗るよ。まぁ、大した名前でも無いけどね。だから・・・その時までお互い必死で生き続けよう」
「!?」
私はまさかの切り替えしに驚きました。
ですが、不思議と嫌な気分にはなりませんでした。
「・・・分かりました。では、どちらに向かわれているのかだけでも教えて頂けませんか?」
私は久しぶりに微笑みながら尋ねました。
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