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第116話

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約4年前

もう無理ですわ・・・私はここまです

当時8歳になったばかりの私(ユーマリア)は生まれついたころの【魔力過大病】によって既に限界が来ていました。

体の節々は痛み、何をするにも辛かった私はある日バスター家の屋敷を飛び出した。

手には縄を持ち、服装も簡素な物を纏って。

自ら死ぬつもりだった。

縄は首を吊るため、簡素な服装は貴族であると思われたらそれを止められると思ったのでそうしました。

私は屋敷の外の世界をほとんど知りませんでしたが、貴族以外の者に対する世間の扱いの話だけは耳にしたことがありましたので万が一にも止められないようにするための工夫でした。

全身痛む体を酷使してライオットの町から外れた場所に向かった私は早速ちょうどいい高さと太さの木を探します。

バスター家の屋敷内でそれをしなかったのは止められる可能性と無事に事が終わった時にバスター家に迷惑が掛からないようにするためでした。

ありましたわ。

私は人気のない場所でちょうどよい木を見つけると何とか太めの枝に縄をかけます。

そして、ゆっくりと首を縄にかけました。

正直怖かった。

ですが、私にとってはそれ以上に病による体への負担が地獄のように辛かった。

「お父さま、お母さま、セイス兄さま、エルリック兄さま、申し訳ございません」

私は口に出して最後にそう言うと足に台として置いていた石をどけ、体を宙に投げ出します。

ミシミシ

尋常ではない負荷が私の首に集中し、嫌な音が耳に聞こえてきます。

苦しい・・・ですが、あと少し・・・

私の意識が朦朧とし始めました。

その時、

ドサッ

私は急に地面に落ちました。

「ゲホッ、ゲホッ・・・一体どうして・・・」

訳が分からない私は思わず呟きます。

すると、

「ふぅ、君。危なかったね」

「!?」

聞き覚えのない声が聞こえてきました。

私は何とか声のした方を見ると、その人は汗を拭っておりました。

私はどうやらこの人に助けられたみたいです。

そのことに気づいたころには私は直ぐに声に出しておりました。

「・・・どうして」

「ん?」

「どうして、余計なことをしたんですか!!」

私は思わず、荒げた声を出します。

今覚えば、あの人に何という言葉を浴びせてしまったのだろうと反省すらしてます。

ですが、当時の私は、余計なことをしてくれたと本気で思っておりました。

すると、その人は言いました。

「どんなことがあっても自分で命を絶っては駄目だよ」

そのような在り来たりなセリフを言ってきたその人に私は激怒しました。

私のことを何も知らないくせに!

「・・・あなたは何故そのように思えるのですか?」

しかし、思いのままにそれを言葉にしようとした私は怒鳴るではなく、別のことを静かに尋ねておりました。

私はその人の目を見た時に気づきました。

この人も私と同じなのだと。
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